≪七節;予期せぬ変調≫

 

 

〔そして―――・・・絢爛豪奢にして、厳粛・・・

一つ小高い玉座の両脇を固めるように、ヴェルノアの諸百官が居並ぶ――――そんな場所に通された時、

アヱカは本当に息がつまりそうになっていました・・・。

 

この場所では失敗は許されない―――もし、自分が・・・

公主様はもとより、このヴェルノアの官僚たちの機嫌を、少しでも損ねるようなことでもしてしまえば・・・

―――と、要らぬ心配ばかりが先に立ってしまい、足下も覚束(おぼつか)ない有様・・・。

 

そんな状態で、ようやく規定の位置にまで来たアヱカは・・・

自身の身に降りかかっていたある変調になど、気付く由もなかったのです―――・・・〕

 

 

ア:・・・・・。(ゴクリ)

  ≪わ―――わたくし・・・≫(パク・・・)

 

  (・・・えっ?! ど―――どうしたのかしら・・・こ、声が―――)

 

  ≪あ・・・あの、わたく―――し・・・≫(パクパク)

  (や、やはり―――!! ああぁ・・・どうしましょう―――こ、これでは・・・)

 

 

〔緊張の余り―――なのか、声が急に出せなくなってしまった・・・

そんなことは、理由にさえならないのですが、全く忌むべき事態が、今この時に起きてしまったのです。

 

しかも・・・あらんべき力を振り絞って、出た声も・・・・〕

 

 

ア:あ゛ぁ゛あ゛・・・う゛ぅ゛う゛―――・・・・

 

 

〔―――ようやくにして出せた声がこれでは、悪い印象しか相手には与えない・・・

そんなことは常識的にも判っている―――けれども、哀しい事に今のアヱカでは、これが精一杯だったのです。

 

そして・・・そんなアヱカを見るにつけ、冷ややかながらも、少しざわつく城内――――

すると・・・〕

 

 

緒:皆様お静かに―――! 公主様の御前であらされますぞ。

 

官:――――・・・。

官:――――・・・。

官:――――・・・。

 

公:―――――・・・・・・。

 

 

〔そんな彼らを、揶揄するように静めたのは、この国の大鴻臚であるオリビヤなのでした。

 

その彼女の言により、ざわついた城内も静まりを取り戻したのですが・・・

 

未だまともな一言をも発する事の出来ていないアヱカに対し・・・

玉座の上からは、無言のプレッシャーとも云うべき、冷ややかなモノがアヱカの身に注がれていたのです。

 

 

しかも―――いくら待てども、フ国の大鴻臚は震えるばかりで額付(ぬかづ)いたまま―――・・・

すると、さすがに苛立ってきたのか、公主様は玉座の肘掛の部分を コツコツ コツコツ と叩き始めたのです。

 

そのことを、さすがにまづいと思ったオリビヤは、急遽玉座まで上がり、

この度の会見はまたの後日になするよう―――との献策を述べようとしたところ・・・・〕

 

 

公:―――――・・・。

 

――バッ――

 

緒:(あぁっ――・・・)こ、公主様―――!!

 

 

〔とうとう―――畏れていた事態が・・・

そう―――なんと、公主さまご自身が玉座をお立ちになり、前を遮っていた緞帳を潜り抜け、

階下に降りてこようとしていたのです。

 

その様子を、雰囲気のみで察したアヱカは・・・もはや藁にも縋(すが)る想いで、

自分の身に宿る最後の頼みの綱に、この瞬間に入れ替わってくれるよう懇願したのです・・・〕

 

――が――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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