≪八節;知っていた・・・公主様のお声≫
ア:≪ああぁっ―――女禍様・・・女禍様・・・≫
(・・・・ぇえっ??!)
≪じょ―――女禍様? 女禍様・・・・女禍さま!!?≫
(そ―――そんな・・・も、もしかして、この・・・不甲斐無いわたくしを・・・見限られてしまったの?!!)
〔今―――望まぬ展開と・・・望まないべき存在の人が・・・来たるべくしてこちらに近付いてきている・・・。
もうここは恥を承知の上で、自分の身に宿る『古えの皇』に、助け舟を出してくれるよう乞うたところ、
なんとも無情なことに、そちらからの応えは、梨の飛礫(なしのつぶて)だったのです。
そのことを―――これはひょっとすると、今までの事を見ており、『なんとも不甲斐無い存在に宿ったものだ』とされ、
見限られたうえに、その見せしめのため出てこられないのでは―――と、思ってしまったのですが。
全き・・・このような展開になるであろうことを―――件の三人は、知りえていたのではないでしょうか。
その証拠に、今・・・頭を垂れているアヱカと、間近な距離に迫った――――
公主様の意外なる一言が―――・・・〕
公:――――なぜ・・・そのように震え於かれておられる・・・・
ア:(・・・・・えっ?! い―――今のお声・・・・)
公:・・・・そなたが、額付いたままでは、そのご尊顔を拝見できませぬではありませぬか・・・。
ア:(わ――――わたくしは・・・・このお声の主の人を・・・知っている!!)
〔遠い―――遥けき処に・・・醜態をこの上なく晒したこの身に対し・・・
意外にも、ヴェルノアの公主様の投げかけられたお言葉は、優しいものでありました・・・。
いや、しかし―――
そこでアヱカは、あることにふと気付くのです、そう・・・今の、ヴェルノアの公主様のこの“お声”を―――
以前―――自分の故国を亡くした折に・・・そんな自分に対しても暖かく迎え入れてくれた場所―――『夜ノ街』・・・
そこは確かに、世に言うならず者ばかりが集う、ある意味とんでもない場所だったけれども・・・
住民の人たちや、鑑定士―――小間物屋のお婆さん―――困っていた自分によくしてくれた、けちなスリ―――・・・
そして・・・その町の組織、『ギルド』をまとめる―――女頭領―――
・・・そうだ、この―――公主様のお声は、ギルドの女頭領だった あの人 と瓜二つなのだ―――
そういう懐かしさに駆られ、アヱカは垂れていた頭を上げたのです―――・・・
するとそこには――――〕
公:・・・おや、ようやく―――そのお顔を見せていただけるのですか・・・
ア:(ぁ・・・)ぁあ! あなた様は―――!!
婀:(フ・・・)お久しぶりに御座います―――姫君・・・
〔『夜ノ街』のギルドという処で、普段どおりに見慣れた顔が、そこにはありました―――・・・
亜麻色の美しい長髪・・・エメラルドグリーンと、ピジョンブラッドの双眸・・・・
そして―――あの噂が流れて以来、もう会えないであろうとされていた、あの顔・・・・
そう―――近隣諸国にも名高き『ヴェルノアの公主様』とは、以前アヱカが身を寄せ世話になっていた『夜ノ街』、
その町にあるギルドという機関の女頭領であった―――
婀陀那=ナタラージャ=ヴェルノア
――――その人だったのです。〕
To be continued・・・・