≪二節;ホ短調・逸る気持ちを抑えるように―――≫
女:≪ふう―――・・・思ったより時間がかかってしまったな・・・。
でも、まさか―――というより、やはりあの地域を従属させたのにも、あの理由があったとは―――ね・・・
それよりも、急がなければ・・・≫
〔その方は、一時的にアヱカという『器』を離れ、霊的存在<アストラル・バディ>となって、
今回問題のあった例の地域へと跳び、そこでの事象を須らく鑑みられ、今回のヴェルノアの行動の目的について、
自らの疑問点を払拭させてきたのでした。
そして、今一度アヱカの身体に戻ろうとしたとき・・・
それはまさにアヱカが、そのことについての言及を行おうとしていた最中(さなか)―――だったのです。
それを、間一髪のところで間に合った女禍様は・・・〕
女:≪ああっ―――!もう始まっていたのか??!
まづい・・・アヱカ、早まってはいけないよ・・・≫
すうッ〜〜―――
ア:―――どうしてこの度の・・・うっ?!!(クラッ〜)
婀:(ぅん?)・・・・姫君―――?
ア:うぅぅっ〜〜―――・・・
〔自身が再び器に戻ろうとしたとき―――図らずもアヱカはそのことについての言及を、婀陀那に対して成そうとしていました。
しかし、それを望まないこの方は、“このままではいけない”ということで、
刹那の瞬間をかいくぐって、器に戻ったのですが―――・・・
今―――アヱカは、今回のヴェルノアの軍事行動に関しての追求を行っている最中でもあったので、
この方の急な行動のおかげで眩暈(めまい)がしていたのです。
刹那―――・・・それは、刹那の時間でした・・・
“古えの皇”は、器であるアヱカに戻るとともに、自身が今まで習得してきたことを総て―――
この短時間の間で話してしまわれたのです。〕
女:≪アヱカ・・・早まってはいけないよ―――≫
ア:≪ッっ―――・・・あっ?!女禍様?!! 急にどうされたのです。≫
女:≪“急に”・・・か、それはすまなかったね。
でも、君ならばあの場は凌げると思ったのでね。≫
ア:≪“あの場”―――って・・・あ!そうです!! そういえば、この国の『公主様』・・・って―――≫
女:≪ああ、ギルドの女頭領だった婀陀那さんだろう。≫
ア:≪えっ――――・・・ご、ご存知だったのですか?!!≫
女:≪う〜ん・・・まあ、なんとなく―――だけれどもね。
それより、やはり今回のヴェルノアの軍事行動には裏があったんだよ。≫
ア:≪え・・・今回の、この一件が―――ですか??≫
女:≪そうだよ・・・それに、あの地域は元々その立場上混沌としていてね・・・
私が統治していた時代も、相当に手を焼かされていたところでもあったんだ。≫
〔アヱカは、自身に宿るもう一つの魂からの助言により、このたび出兵のあった地域が皇の仁政の時代にも、
兎角問題視されていたことを知り、理解しえたのです。
そこは・・・土地柄的にも、元来フ国が成り立ち、やがて王家の分派がさらに分離して南下する際に、
それに便乗をしていった、力のある大名連中が作った小国家でもあった・・・
しかもそれは、その地域の豪族達の血筋を受け入れ、“列強”とはまた違った異質のものに変化してしまったので、
いうなれば実力でその威光を指し示さなければならなかったのです。
それに、ヴェルノアでも、このことは以前にも朝議にまで昇っていた議案らしく、
宜しく時機を検討していた最中での公主・諫議大夫失踪騒ぎ―――に、簒奪未遂という一大事もあいまって、
先送りにされていた問題でもあったようなのです。
―――と、いうことは・・・そう、今回の軍事行動は、満を持してのモノであり、
女禍様が見てこられたのも、従属されたとて不服・不満の満ちた民達の表情ではなく、
寧ろようやくにして一つになれたことに安堵するものだった事の由を、アヱカに聞かせたのです。〕
ア:≪―――そういう・・・ことだったのですか・・・≫
女:≪うん・・・まあ――― 一部の地域のサンプリングだけでも十分だったのだろうけれども、
私自身納得のいくものが欲しくって・・・ね、それで今まで駆けずり回ってしまってて―――・・・
でも・・・もう少し遅かったら、取り返しのつかないことになっていたね、ゴメン。≫
ア:≪いいえ―――そんなことは御座いません、わたくしの方でも早合点してしまって、危うく・・・≫
女:≪(クス・・)それより、あと少しだから―――頑張って!≫
ア:≪―――はいっ。≫