≪二節;見破られた“お芝居”≫
誰:―――――・・・・。(キョロキョロ)
〜キィ ィ・・・〜
誰:・・・・・。(よし・・・よく眠っておるようじゃな―――)
〔そして―――僅かながらに扉を開けたときに出た、木の軋む音に注意を払いながらも入室し、
寝台を見てみれば―――まるで小高い岡のようなその影に、『よく眠っている』としていたのですが―――
その時突然―――!!〕
ガッ―――
誰:ううっ―――?!(う・・・背後ろ?? で、ではあれは―――??)
タ:フ・・・どうやらヴェルノア側が先に動いてしまったようだな・・・。
ワシと、主たるお方とを引き離した上に、我が手の者と会わせさずして刺客を送り込んでくるとは・・・
これがヴェルノアでの、外交の流儀か―――?
誰:お―――お待ち下さい、わ、私です、ルリです・・・!
タ:・・・ナニ?ルリか?! 本当にお前―――なのか・・・?
ル:は―――はい、それにしても主上はベッドに寝ておられたのでは?
タ:フフッ―――、この国はワシでも勝手の利かない処だ・・・
どうしてか、ゆっくりとくつろげようか―――
ル:(なるほど――)そ、それでは・・・この国が用意した食事は・・・
タ:未だ―――全面的な信頼を置いているわけではない・・・
だから、丁重にお断りをしたまでだ。
ル:(やはり――迂闊であったか・・・)
ああ〜〜―――それにしても・・・ようやく会うことが出来ました・・・
何しろ、この国の警備と来たら、それは厳重なもので、この私ですら公主様や紫苑様に無理を聞いてもらって―――
〔薄衣だけを纏い―――他に何も携えていないとはしながらも、明らかに不審者であるとしたとき、
漢は―――その女を背後から羽交い絞めにし、こちらが友好的にコトを推し進めようとしているのに、
それを逆手に取ろうとするのがヴェルノア流か―――と、そう質したところ、
その女は自らの口で、タケルの情報機関『禽』の一羽である=カケス=のルリだと云ったのです。
すると―――タケルは・・・急に何を思ったのか・・・〕
タ:フフ―――いい加減、お芝居はおやめになったらいかがなのです。
ル:ええっ―――? な・・・ナニを―――主上は部下であるこの私を・・・
タ:一体・・・=カケス=の技を、どこまで習得されておられるのか・・・
その辺は大いに興味の対象となるところなのですが―――
ル:わ―――悪い冗談はよして下さい、今・・・この、公主の姿になっているのも、
この国で一番動きやすいからで―――・・・
タ:だ―――と、したなら・・・その首にある飾りに・・・
―これを愛しの娘 ナタラージャ=ヴェルノア に捧ぐ―
―――そうあるのは・・・?
ル:え?そんな―――まさか・・・それは今宵はつけては・・・
(はっ――!)し―――しま・・・っ・・・
〔いつも―――公主様の首につけていた首飾り<チョーカー>・・・
それは、まだ父王が優しかったときに、唯一貰った贈り物―――
それはいつ何時になっても外す事はなかった―――そう、ギルド陥落の際、
敗れて虜囚となったときでさえ、外す事はなかったのに・・・
それを今―――初めて、彼女が『公主』という衣を脱ぎ捨て、この漢と契りを交わすべく、
彼の部下に成りすまして近付いた―――・・・なのに、逆にそのことをカマに掛けられ、
自分自身の口で、正体を暴いてしまったのです。〕