≪三節;今、そこにある危機―――≫
〔それはそうと―――こちら、ガク州では・・・〕
敵:それぇ〜〜―――かかれえ!!
ワアァァ――――・・・・
〔今期に入って何度目かの攻防戦が繰り広げられようとしていました。
しかし―――前回、ヒにその正体が割れてしまったキリエは、士気があがるはずもなく・・・・〕
キ:(・・っく)後退―――後退を!!
兵:えぇ〜〜―――っ・・・
兵:ま、またかよ・・・
ヒ:――――・・・・。
〔前回―――イヤ、それ以前にも素晴らしいまでの作戦の組み立てをし、カ・ルマの侵攻を悉く退けてきた州司馬のキリエ・・・
ですが、奇妙なコトに前回の攻防戦が終了するのと同時に、ガク州軍の上官同士は険悪な関係となっており、
あれ以来―――・・・互いが口も利かない状態になってしまっていたのです。
しかも―――この度の攻防戦に入るや否や、戦戟を交わらせることなく、ただ後退を指示し続ける州司馬のキリエ・・・
それでも、当初州兵たちは『これはまた何かの策があるのだ』―――と、していたのですが・・・
ここ数日もこんなことばかりがつづいていると、そうではないことが次第に明白となっていき・・・
ですが、指揮官たるキリエが州軍の統括をしている以上は、そんな命令でも聞かないわけにも行かなかったのです。
そこで―――こんなことではいけない・・・と、州兵がヒに相談を持ちかけたところ・・・〕
兵:あのぅ――――将軍様ぁ・・・
ヒ:ぁあ゛?! なんでぇ―――!
兵:(ひぃ・・)あ、あの〜〜・・・わ、われわれは一体いつまでこんな事を続けなくちゃならないんで??
兵:そ―――そうっすよ〜〜・・・前回の攻防戦より、敵と戦戟を交わらせることなく・・・もう六里あまり後退してるんですぜ?
ヒ:―――ンなこと、このオレが知るかよ!!
文句があるなら司馬に云えや―――!!
兵:〜〜―――と、このような剣幕でして〜〜・・・
キ:・・・そう―――
兵:司馬どの〜〜―――これはやはり何か考えあっての後退・・・なんですよね?
キ:・・・“何か”・・・“考え”―――?
・・・ないわよ、そんなもの―――
兵:な―――ない・・・って、そんなぁ?!
兵:そうっすよ―――考えがないなんてないじゃあないっスかあ!!
兵:そうですよ・・・第一そうは言っておいても、二度もカ・ルマの軍を退けたではないですか!
それを―――なぜ・・・?! なぜ今になってそんな自信のない言葉を吐かれるのです!?
〔あれ以来―――ヒは機嫌が悪くなると、下の兵卒たちに当り散らすようになっていました。
それはこのときでも・・・ただ、兵卒たちは、自分たちが意味なく退いているのではない事の事由を知りたかっただけなのに・・・
それなのにヒは、話しかけられると生来よりのいかつい顔をよりいかつくし、怒鳴り声を上げたのです。
その様相を州司馬であるキリエに報告しようとすると、ヒとは全く対照的にひどく落ち込んだキリエがいたのです。
以前までは度重なる攻防の末に、並ならぬ用兵の手腕を発揮し、州兵たちに全幅の信頼を寄せられていたキリエ・・・
でも―――前の戦いにおいて、一体どこに落ち度があったのか分からなかったけれど、
確実にいえたことは、ナニに憤っているのか分からない虎鬚将と―――
勝ちを拾ったにもかかわらず、ガックリと肩を落とした州司馬がいただけ・・・
思えば―――そう、思えばあの時以来より自分たちは後退ばかりを続けており、
その理由を州司馬であるキリエに尋ねてみたところ、彼らの意図とは全く異なる答えが―――・・・〕
キ:・・・私にはね、もう―――あなたたちを指揮する資格なんて・・・ないのよ!!