≪六節; 子      爵 ≫

 

 

〔ですが―――この混乱を・・・“虎視眈々”と狙いすましていた存在がいたならば・・・??

 

そう―――このとき、まさに憂慮すべき事態が・・・〕

 

 

ノ:(ノエル;『七魔将』の一人ワグナス麾下の副将)

  は〜〜―――ッはっはぁ! この前の借りを返しに来てやったぜ!!

ダ:(ダンダーグ;『七魔将』ザルエラ麾下の副将)

  そ〜〜〜の通りよぉ!! これがお前たちの年貢の納め時だぁ―――!!

 

ヒ:(うぐっ―――・・・あのヤロウども・・・この前にも来てやがったヤツラじゃねぇか!)

  ―――――・・・・・・いや、ダメだダメだ!! オレたちはまたあいつを頼りにしようとしている!

  これは・・・オレたちの闘いなんだ!!

 

 

〔今回の夜襲に参加していたカ・ルマの将―――ノエルとダンダーク・・・

この二人こそは、前(さき)の侵攻戦にも顔を出していたようなのですが、

ゴートサイクロップスの試作運用が失敗に終わり、しかも追い立てられるように敗走してきた事に、

彼らの上官ともいえる『七魔将』から叱責の憂き目にあっていたようで、

その汚名を返上すべく、此度の夜襲に参加をしてみれば、まるで面白いように崩れていくガク州軍を見て、

今―――これまでの敗戦のツケが帳消しになるものぞとの進撃ぶりに、

ややお調子に乗っていた傾向はさすがに否めなかった事でしょう・・・。〕

 

――ですが――

このとき――――・・・

 

この闇を切り裂く――――

ある“存在”の

 

遠吠えが・・・

 

 

ウォオオオ――――――――――・・・・・                                                             

・・・・ォォオオオオ―――――――ン・・・・・

 

カ:な―――何事です?!!

コ:この遠吠えは・・・あ!あれは―――!! あれは・・・なんだ――――

 

カ:(うっ――)あれこそは・・・ 魔獣の乗り手<ビーストライダー> !!

  なんということだ・・・この期に及んで現れてこようとは―――

 

 

〔その―――先ほどから虎視眈々と戦場を臨んでいた存在こそ、カ・ルマの副将連中などではなく、

魔獣の乗り手<ビーストライダー>だったのです。

 

では・・・なぜこの存在は、戦場であるガク州へと来ていたのか・・・・

 

主より帯びた使命を果たさんがため――――?

この殺地の“匂い”に誘われたため―――??

それとも――――――――――――――???

 

しかし、それはそのいづれでもなく――――・・・〕

 

 

魔:お〜やおや――――どうにもどハデにやらかしちゃってくれてるようだねぇ〜♪

魔:>(はあ〜・・・)子爵様―――<

 

子:(子爵;―――ある魔獣に跨る“子爵”と呼ばれる者・・・その正体は『ヴァンパイア』)

  わぁ〜かってるってさぁ――――マダラ・・・あたしはそんなには自惚れてやしないさ。

  ただ―――近くに来てたんでついでに寄ってみりゃあ、なんとも面白そうなことになってんぢゃないの。

マ:(マダラ;“子爵”級ヴァンパイアを背に乗せて疾駆する魔獣・・・その正体は『トウテツ』)

  >・・・それよりも左将軍様は―――<

 

子:・・・おや、そういえば見えないようだね。

  (フ・・)こりゃ―――挨拶代わりも兼ねて、そこんところを聞き質しにいかにゃならんか・・・・

 

  つぅわけで・・・征くよっ―――!!

 

 

〔体長は二間に余り―――体高も一間を超すという魔獣『トウテツ』に跨り、

ヴァンパイアの“子爵”は、戦場を臨むのに当たってどこか口元が緩みがちになっていました。

 

そのことをどことなく諫めた、マダラと呼ばれたトウテツ―――

 

そう―――この存在たちは、自らが帯びていた使命の“もののついで”的感覚でこの戦場に見物に来ており、

しかもよく見てみればカ・ルマ軍に追い立てられている州公連合軍に、なぜこんな危機的状況にもかかわらず

姿を見せていない“同志”に、その理由の如何を質そうとしていたのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

>>