≪七節;“左将軍”と“右将軍”≫

 

 

〔そして―――その存在は血塗られた戦場へと降り立ち・・・〕

 

 

兵:うわわぁ〜〜―――っ!!

敵:へっへへ〜〜―――これで49人目・・・と―――

 

ハッ ハッ ハッ ――――

 

敵:へへへ――――そうせっつくなってよ・・・(クル・・)

  う、うわっ―――!! な、なんだこいつわ゛!!

 

グルルル・・・・・

 

敵:コ・・・このヤロ〜〜―――あっちへ行けぇ〜!!(失禁)

 

          

 

魔:・・・・フン――――小便臭いガキ風情が・・・弱いくせに強がるからこうなる。

  さぁ―――次に犠牲になるのは誰ぞや!!?

 

 

〔魔獣・トウテツは、その場に居合わせた最後のガク州兵を倒したカ・ルマ兵を丸呑みにしてしまいました。

そのあとも、恐怖に慄(おのの)く敵兵を尻目に、その魔獣はたった一匹で戦場を横行していたのです。

 

そう―――“たった一匹”で・・・

では、マダラの背に乗っていた“子爵”なる者はどこにいってしまったのでしようか、

しかしそれは紛れもなく――――ガク州司馬駐在の天幕に・・・・〕

 

 

キ:(ああ〜〜―――・・・どうしよう・・・こんなのじゃいけない・・・

  いけないのは判っているんだけれども―――)

 

誰:おやおや―――どうしたんだろうかねぇ〜。

  別嬪さんがしょ気てちゃサマになりゃしないよ・・・・

 

キ:(え・・?)あっ―――サヤさん?! いつのまに――――

サ:たった今だよ―――それよかどうしたって言うんだい?

  皆して一丸となって闘っているって時に・・・“左将軍”であるあんたが、こんなとこでこんなになってる〜〜―――って・・・

 

キ:・・・・ごめんなさい――――

サ:(あらら・・・こりゃ〜〜相当重症のようだねぇ。)

  なんか悩みがあるんだったらさ―――あたしにいってご覧よ。

 

キ:・・・そうね―――ありがとう。

 

 

〔彼女たち二人は、いわば昔からの知己―――それゆえに難苦しい形式などはそこにはなく、だからこそ気軽に話し合えたのです。

故に―――キリエはどうしてこうなったか・・・の事の顛末を語るにいたり・・・。〕

 

 

サ:ハァ〜ン、なるほどねぇ――――

キ:私は・・・自分で良かれと思ってやっていたことのそれが、人間たちの自尊心を少なからず傷つけてしまっていたことを知ってしまって・・・

  それで―――・・・

 

サ:・・・まあ、そりゃあ確かにショックなコトなんだろうけどさぁ―――・・・

  なんかそれって・・・間違えていやしないかい―――

 

キ:えっ・・・なにが?

 

サ:あたしら・・・あの日あの時誓ったじゃないか―――

  あの方の遥けき理想のために、いかなる艱難辛苦に堪えて見せる―――ってさ。

  違うかい?

 

キ:―――――・・・・。

 

サ:・・・けど、まあ、昔からの馴染みがここで苦しんでいるって姿を、傍目で見れてるほどあたしは気分屋じゃないしね。

  こっから先は好きにやらさしてもらうよ―――

 

 

〔州軍の将軍の一人、それもキリエの片腕といってもいいヒを救うために、

彼の目の前で 変身<メタモルフォーゼーション> してしまった事をしきりに悔やむキリエ。

 

でも、そんなことは『大事の前の小事』に過ぎない―――と、サヤは諭したのです。

 

そして―――自らに課せられた使命と、半ばお節介焼きも同然で戦場へと赴いていくサヤの背後姿を見、キリエは―――・・・〕

 

 

キ:(スパスィーヴァ・タワーリシチ〔ありがとう同志よ〕・・・あなたの諭しがなければ、

  私は愛する者達を見殺しにしていたわ・・・)

 

 

〔『同志』・・・同じ志を旨に抱く者からの諫めの言葉に、今までの自分を一層省み、

消えかかりそうになっていた闘志の炎を再び燃上させるキリエ・・・

 

そう―――ここに彼女は復活を果たすこととなったのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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