≪八節;再び戦場に―――≫
〔そして―――戦場では・・・〕
マ:・・・・話はつきましたか、子爵様。
サ:・・・ああ―――間もなくこの血塗られた場に、自らの意思で再び立つだろうさ・・・
だが、その前に――――少しでも片しといてやるよッ!!
マ:(あいも変わらず不器用な・・・)
では、背にお乗りを―――
〔サヤは、自分たちが自分たちの主ほど強くないことをよく自覚していました。
だから今回の事も、そのことでキリエのココロが大きく揺らいでいるのをすぐに察知していたのです。
それはそうと―――たった一人で多勢(たぜい)を向こうに回し、『双顎』を振るっているこの男は・・・〕
ヒ:おぉ〜〜―――りゃあ! どっせい!!
敵:うおっ―――こいつ・・・中々やりやがるじゃねえか・・・
敵:ああ、このオレたちに囲まれても―――・・・
――するとその時――
ォオオオ―――――――・・・・・ン・・・・
敵:(な・・・)ま、またあの遠吠え―――・・・
敵:な、なんだ? ありゃあ―――・・・
ヒ:ぎ―――銀色の髪・・・
敵:う゛え゛え゛〜っ!! あ―――ありゃぁ〜 ビーストライダー だぜ??!
ヒ:(あれが―――? するッてぇと・・・何か? このどさくさに紛れてオレ共々餌食にしようってンじゃあ・・・)
〔自分に群がりくる敵兵を、己れの武一本で薙ぎ払っていたヒ―――・・・
でも、いつしか自分の隊は、自分ただ一人を残す結果となっており、己れの無力さを痛感する事となりえていたのですが、
再び・・・あの『遠吠え』が戦場にコダマとなって鳴り響いたとき―――
そこには、魔獣トウテツに乗った、畏るべきヴァンパイアの“子爵”がいたのです。〕
サ:ほぉ〜う・・・あんたたった一人でこいつらを向こうに廻したってかい。
人間にしちゃあ胆力のあるほうだねぇ。
ンじゃ―――ここは一つあたしも混ぜらせて貰うとするよッ!!
ヒ:な・・・なんだと? いや、しかし―――お前・・・
サ:・・・ま、あんたがダメだといっても、あたしには主から言い付かっていることだってあることだしねぇ・・・。(にぃ)
・・・マダラ―――今までよく我慢した・・・ちょいとばかり遊んでやりな!!
マ:フ――――ククク・・・仰せのままに・・・。
さぁ―――嬉ぶがいい、一思いに弑してくれる。
〔主からの命が下ると、その者は隠された残忍さを忽(たちま)ちに表わし、
瞬く間に近くにいたカ・ルマ兵たちを血煙へと変えていったのです。
それは―――魔獣の主であるヴァンパイアの子爵である存在も同様に・・・
一体どこに隠し持っていたもの―――と、思われるような、赤黒く変色した太刀を手に、
ある者は血飛沫とともに―――ある者は断末魔とともに・・・果てていくのです。〕