≪四節;旋風の援軍≫
〔その一方で、同じくガク州攻防戦でも別の場所で戦っている、ジン・ギの両州公軍は、
以前からの士気低下が祟り、苦戦を強いられていたのです。〕
コ:このままでは―――いかん!!
一時後退をしつつ、戦線の維持を図るよう!
カ:(以前からの消極的戦術が、ここに来て祟りましたか―――)
私たちも、このまま退却を開始いたします―――が・・・
殿(しんがり)は、私を中心としたもので固め、負傷者はすばやく後方に―――!
〔やはり―――彼らほどの戦巧手をしても、士気が低いままでは・・・と、言うのは望ましくはなく、
後退を余儀なくされたのです。
けれど、後退の一手を取るにしても、その手並みは実に鮮やかであり、
それ以降のジン・ギ州、両軍の中には一兵たりとて負傷をする者など出なかったのです。
しかし―――それでもやはり、カ・ルマ軍側が勢いづいてくるのは、是非もないようであり・・・
すると―――・・・〕
コ:(む・ん・・・?)風向きが―――変わった・・・?
カ:いかがなされましたか、ギ州公殿。
コ:今―――圧倒的不利なのは我らのはず・・・なのに、何かが違う・・・
〔元々、ギ州公である コウ=ジョ=タルタロス は、フ国軍の第三軍を指揮していた将であり、
陣容の構えからその采配振りは、第一軍の将に据えてもおかしくはない実力を持ち合わせていたものでした。
けれどそれ以上に、彼という者は“戦”についての『嗅覚』に優れていたのです。
とある―――フ国軍内での演習の折に、自分が指揮する軍が苦境に立たされても、
ある時点より戦局が変わってしまい、戦線を押し戻すどころか・・・
当時演習の相手であったフ国軍第一軍を負かしてしまった・・・。
そのときに、第一軍の将が負けた理由を訊き出したとき・・・
彼は一言―――『風向きが変わったから』〕とだけ申し述べたに過ぎなかったのです。
そして――――それは今回においても・・・
だとするならば、現時点での“風向き”とは、一体何なのでしょうか・・・
それは―――・・・
ガク州南方より、“旋風”と共に砂塵を巻き上げてくる一団が・・・〕
紫:皆の者―――我らの相手は漆黒の軍のみ! かかれぇ〜〜―――!!