≪七節;“悲痛なる叫び”≫
〔そうなると―――これからは一方的な反撃の開始・・・に、なるものと思われるのですが、
そうはならないのが世の常というものであり・・・〕
紫:ところで―――ガク州軍本隊は?
それと後、敵将のことを詳しく・・・
カ:・・・その事なのですが―――
ガク州本隊については、私のほうでも何があったかまでは判りかねますが・・・
ここのところでは退いては押し―――退いては押し―――ばかりのようでして・・・
紫:(ふぅん・・)―――と、云う事は何とか踏ん張れているようですね・・・
コ:いえ―――そうではなく・・・
紫:・・・違うのですか―――?
コ:はぁ・・・向こうが攻めていると退き、向こうが退くと戦線を押し戻すといったような・・・
紫:それを―――ここ最近ずっと・・・?
カ:それに加え・・・意外に手を焼いているのが敵将の事でありまして・・・
〔紫苑は―――まづ最初に、現在展開されている戦局について知ろうとしました。
けれども、州司馬のとっている行動は、消極的というモノの何ものでもなく、
ただ戦わずにて戦線の維持だけを図っている・・・とのことに、早くも悄然とするしかなかったのです。
しかも、それに加えてもう一つ―――現在、両州公とも頭を痛めている問題・・・
それが、今、相手をしているという“魔将”の事・・・
そして、それは望まずとも、向こうのほうからやってきたのです。〕
コ:むっ・・・来たようですぞ―――
カ:ふむ・・・取り立てて今は対抗する手段がありませんので、
紫苑殿には少しでも被害を最小限に抑えるために、これを装備していただきたい。
紫:(うん?)これは・・・耳栓? どうしてこのようなものを・・・
カ:これこそが―――彼の魔将が持ちたる武器の、ある効果に対抗し得るべくための善後策なのです。
ですが、それでもあまり近づきすぎると、眩暈などの症状が現れて立つのもやっとな有様となってしまうのです。
コ:きますぞ―――!!(サッ・・)
カ:さ・・・早く―――(サッ・・)
紫:わ―――判ったわ。(サッ・・)
ヒィィ―――・・・キュィイイ―――――ン・・・
紫:(うっ!くぅっ・・・み、耳栓をしていても鼓膜が引っ張られるように痛い―――
わ、私でさえこうなのだから、何もしていない公主様の軍は・・・)
〔その敵将の得物―――<スクリーマ>の、=サイレントスクリーム=を受け、
紫苑は戸惑い、また恐怖をしました。
その“未知なるチカラ”を操るという存在と、それに伴う甚大なる被害に・・・
その事が判ったため、ガク州軍側でもなす術がなく、ただ戦線を維持するしかなかった・・・
そう思ってしまう紫苑がいたのですが。
けれども・・・そう―――ある者の噂・・・
ただ―――好んでカ・ルマ兵を掃討する・・・と、言う者の噂までは、
両州公も、ましてや紫苑も知らない事実。
ならば、今ここに、昔から連綿と続く因縁の下に、会してしまったならば――――?〕