≪九節;“想像”と“現実”紙一重―――≫

 

 

〔しかし、こちらの驚き様といえば、紫苑たちのそれとは比べ物にならないほどであり、

過去に彩られた因縁の名の下に、またしても激しき闘争は繰り広げられていくわけであり―――・・・〕

 

 

ワ:お―――お前は・・・

 

キ:≫フフ・・・なるほど、お前だったか、ワグナス―――会いたかったわよ・・・≪

ワ:む ぐっ―――!

 

キ:≫まさか・・・この私を忘れたわけではないでしょうね。

  いや―――絶対覚えているはずよ・・・≪

 

―――だって・・・敵同士だもの・・・私たち―――

 

〔特に、彼らの間では会話らしいものは派生しませんでした。

でも・・・次の瞬間には、互いの武器が、激しい火花を散らせあいながら戦戟を交わらせ始めたのです。

 

それは―――まさに凄まじいものでした・・・

 

見上げんばかりの巨体を揺るがすハイランダーと、漆黒の甲冑の魔将・・・

互いの存在が宿業の敵であると云わんばかりに―――・・・〕

 

 

キ:≫ふふふ―――会いたかったわよ・・・この日が来ることを、どんなに待ち焦がれた事か!!≪

ワ:むううっ―――な・・・ナゼお前がこの時代に・・・

 

キ:≫フッ・・・知れた事!! 貴様たちの計画など、すでに丞相が看破していたわ。

でも、それまでには永い年月が必要、そのためには“皇”であられたあの方は仮死を余儀なくされ、

またお方様たちも凍眠<コールドスリープ>を余儀なくされた・・・。

 

ただ―――まだ当時レベルの低かった私たちは、そのままで生きる事を強要させられたのよ。

斯く云う私は老婆に身をやつして、周囲の目を欺くしか・・・≪ 

 

 

ワ:ちいぃっ―――小癪な・・・【ブラッディ・ダスター】

キ:≫なんのっ―――【フローズン・ヴェノム】≪

 

 

〔その一薙ぎ毎に大地が揺れ・・・その技を繰り出す毎に大気がいた・・・

この一節は、彼らの闘い方が詳しく記述された 『ピリポ紀』=外伝・マディアノ戦記= の一部を抜粋したものなのですが、

文章で書かれたものを読んだだけで、実際の物事を直接に見た事のなかった後世の人々は、

この記述の事を、自分たちが想像しやすいように、筆者が表現を誇張したものだろう・・・と、思っていました。

 

―――が・・・今そこにあるモノこそは、彼の記述通り・・・

異形の騎士と、黒騎士の戦戟は、そこにいた人間たちの入る余地さえ許さなかったのです。〕

 

 

カ:す・・・凄まじい―――『読み物』と『実物』が、こうも逼迫しているとは・・・

コ:いや―――目で見る分、実際に行われているほうが凄まじいでござる・・・。

 

ヒ:・・・ああ―――全くだぜ・・・

  あんなところにいたって、場違いもいいとこだぁ・・・。

 

コ:・・・そこもとは―――?

ヒ:あ?オレの事か??

  オレはなあ、ガク州軍・准将であるヒ=チョウ=ベイガンってんだ。

  ま、これからも一つよろしくたのまぁ。

 

カ:あなたが? だとすると・・・州司馬はどうなされているのです―――

ヒ:・・・ああ〜司馬どのかい・・・

  残念ながら、ここにはいねぇよ―――まぁた後方で震えちまってんのじゃねえのかい・・・。

  ま、だからこそ、このオレが前線に出て州兵どものケツをひっぱたいてやんねぇとな。

 

カ:(なんと・・・またしても―――ですか・・・)

コ:(大丈夫なのでござろうか―――・・・)

 

 

〔一撃―――また一撃ごとに閃光が迸り、得物と得物がぶつかり合う度に空気が震えた・・・

それを目撃したとき、今まで自分たち人間が繰り広げていた戦いとは、明らかに次元の違うことに、

それがたとい百戦錬磨の彼らであったとしても、息を呑まずにはいられなかったことでしょう・・・。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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