<第五十五章;奇妙な関係>
≪一節;耳に残る言葉≫
〔ガク州での攻防の―――その最終局面にて、カ・ルマ側の切り札として現れたのが、
“魔将”の一人である ワグナス=グゥエイン=アラケス で、あったのならば。
防衛側のフ国・ガク州の切り札(?!)としては、古えの闘士であった二つの存在―――
“ハイランダー”と“ビスートライダー”なのでした。
いえ、でもこれは妥当とは言いがたかったでしょう。
なぜならば、この二つの存在は、カ・ルマの魔将の首級を挙げるためだけに参戦しただけで、
結果的に見て、フ国側に加担した・・・ように見えたのですから。
その証拠に、急所の一つである咽喉を貫かれ、蒼龍の騎士の凍結の奥儀の一つで斃した後、
急に派生した霧に紛れる様に、その二つの存在は消えていったのです・・・。
去り際に、また“あの言葉”をその場に遺して―――・・・〕
カ:この霧・・・収まりそうにありませんな。
コ:それにしても・・・なんとも奇妙な言葉でござった―――
紫:そうね、なんて云ってたのかしら・・・
ヒ:・・・ダスビドゥーニャ・タワーリシチ・・・だとよ。
紫:(ぅん?)あなた・・・やけに詳しいわね。
ヒ:そりゃ当たり前だろう―――こちとら出会う度に何度も聞かされてんだ、イヤでも耳に付いちまうもんだぜ。
カ:そうか―――確かあなたは、カ・ルマに侵攻される度に立ち向かい、それを退けてきたガク州軍の将・・・
コ:だが・・・なんとも不可解なものでござる。
異形の者が異形の者を、討ち参らせる事など・・・。
ヒ:知らねぇ〜〜―――よ、あいつらはあいつらの勝手でやってんだろ。
そりゃ―――オレも最初のころは不思議には感じていたが・・・あんなもん見せ付けられちゃあなぁ〜〜。
紫:(フフ・・)それもそうかもね―――確かにあなたの云うことも一理あるわ。
ヒ:・・・ところで、あんた誰?
紫:・・・・そうね、それではとりあえず私たちの事は、あなたたちの本陣である砦に戻る道中にするとしましょう。
〔ひとまづ―――今回の戦線を収める事に成功したガク州軍・・・と、ジン・ギ両州公軍、
それからヴェルノア公国軍の連合軍は、
侵攻線の前線基地ともなっているグランデル砦へと引き上げていったのでした。
―――そこで彼らは、今回の戦闘に参加したジン・ギの両州公軍と、
ヴェルノア公国軍それぞれの理由を分かち合っていたのです。〕