≪三節;奇跡の出来事≫
〔それとはまた別のお話し―――・・・
フ国は王都・ウェオブリで幼王子ホウと、彼の養育に携わっていたアヱカ。
そんな二人に関わる、こんな出来事が・・・
それは―――いつものように天気の良い日の出来事・・・
この世の成り立ちとあり方、そんな中で自分たち人間がどう生きていくかを、教えられていた中での出来事なのです。
ある日のこと―――ウェオブリ城外苑にて、元気に駆け回る幼い王子の姿が・・・
ところが―――ある木陰の根元にて、横たわる影を見かけてしまった事から、
彼らを巡る歯車が廻りだしたのです。
その木陰で横たわっていた存在は、何も身体を休めるためにそうしているようではありませんでした。
それというのも、その存在の体にはいくつもの生傷が確認されていたから・・・
しかも―――彼の背には『漆黒』の翼・・・
だったから―――なのでしょうか・・・幼い王子は足早にそこから立ち去ってしまったようなのですが、
それを薄目で確認した “黒き翼の人”<レイヴン>は・・・〕
ヤ:(ヤノーピル=ドビ=バックスタイン;?歳;男;背に漆黒の翼を持ちたる有翼人種。
しかし、その羽の色ゆえに“黒き翼の人”<レイヴン>と呼ばれる。(ちなみに彼らは天使ではない))
―――へっ・・・へへへ・・・に、逃げちまいやがったか・・・ついてねぇよなぁ・・・
オレも・・・とうとう―――年貢の納め時が来やがった・・・か。
〔幼い者は、この―――生傷を負った者が薄目を開け、こちらを見た事に驚き、
それが怖くなって逃げていきました。
そして大方、人間ではない者がここにいるということを近くの大人に言いつけ、
やがて自分は処分されてしまうだろう・・・いや、その前に、
傷のダメージが因(もと)で、この先が永くないかもしれない・・・
そう思っていた矢先に―――先ほど、幼い者が去って行った方向から、
こちらのほうに駆け寄ってくる二つの足音が・・・。
その二つの足音こそ―――〕
ホ:―――はい、お水・・・
ヤ:・・・あ? す―――すまねえ・・・(ゴク・・)
ア:ひどい傷・・・どうかなされたのですか?
ヤ:(ぁん?)・・・あんたたち、オレが怖くねぇのかい―――
ア:何のことでございましょう―――・・・
ヤ:ヘヘッ・・・見えねぇのかい―――オレの背にある翼を・・・
ア:―――これがどうかいたしたのですか。
あなたも、私も、この世に等しく生を受けた存在ではございませんか。
ヤ:(ン・な―――・・・)
〔レイヴンのヤノーピルは・・・自分の目を―――耳を―――疑いました。
震える手でコップ一杯の水を差し出した幼き王子もさながらに、
人間だとか―――そうではない者だとか―――分け隔てなく接してくる一人の女性・・・アヱカに。〕