<第五十六章;アンニュイな気分>
≪一節;“禽”vs“シュヴァルツ”≫
〔このほど―――上からの命令を受け、とある者の抹殺を図るために、
ウェオブリに姿を見せていた黒き翼の暗殺集団『シュヴァルツ』の者達は、
思いもよらなかった者達からの、思いもかけない攻撃できりきり舞いにされていたのでした―――〕
――レイカ・・・未申の方角に、仰角12度5分――
――それに・・・子丑の方角に7度3分よ、見える。――
鳳:ええ―――よく見えるわ、シズネ・・・。
あなたの<サイト・マーキング>のお陰でね・・・。
キリリ・・・ ビュゥン――――
〔『エイミング・ウィスプ』―――実際の矢ではなく、行使者の気で作られた光の矢は、
確実に標的に追いつき貫くとされる。
(ちなみに、あらゆる障害を避け、どんなに隠れたとしても追尾できるという優れモノ。)
『サイト・マーキング』―――別称『標的』とも呼ばれるこの術式は、狙撃者が狙いやすいように対象にへばりつき、
その後には決して剥がれる事はないという。
(ちなみに、暗闇になると貼りついた部位が発光するので、逃げ隠れたりしても確実にそこにいることが判るという。)
未明に現れ出した黒い翼の集団―――・・・
そこで=鳳=は、仲間の=白雉=からの指示により、近くを飛んでいるこの集団に向かって威嚇射撃を行ったのです。
ですが、それで去るものならばなんら問題もなかったのですが・・・
考えてみると、その集団は“漆黒”の翼を持つ者達、つまり―――カ・ルマの手の者だったのです。
ゆえに、怯むどころか、散開・集結を繰り返し、なかなか的を絞らせなかったのです。
―――と、そこへ・・・手法を変えた『禽』は、確実に仕留める為に、
統率から離れつつある一人に<サイト・マーキング>を貼り付かせ、そして迎撃に成功をした―――
それを知った“シュヴァルツ”の団長は、ひとまづその場から撤退をし、
態勢を改めた後に―――・・・と、しようとしていたのです。〕