≪四節;疑う者、疑われる者≫
〔けれども―――こうした事を、何の事情も知らない他人から見ればどうなのでしょう・・・
それも、ほんの少し前からこの遺構に寝泊りをし、ここのシステムの全メンテナンスを任されていた、
ある女性が見たなら―――・・・
イヤ、それは間違いなく―――・・・〕
ゼ:(ピ・ピ)(うぅ〜ん・・・ここのはずなんだけどなぁ――――どこなんだろう・・・)
ここ・・・って、案外複雑なのよねぇ〜〜―――でも、やり甲斐のある仕事だわ!
(・・あら?)あれは―――・・・
―――確かこの国の第二王子様? だとしたら・・・横に座っているのは誰なんだろう。
フ国の人ではないのは、確かなのよねぇ・・・・だとしたら―――
〔只今―――“休日返上”にて、システムの全メンテナンス見回り途中のゼシカ・・・・
彼女は、このドルメンで、システムが稼動できる状態になるよう、もともとのここの主である存在と、
自分の母の古き知己の取り成しにより、このドルメンに居つくようになったのです。
その―――見回り点検の途中、ここの第二王子であるホウ王子に近づいていた、この国の人間ではない女性―――・・・
そのことに、つい最悪の事態を想定してしまったのです。
でも・・・例えそうだったとしても、互いに面識のない者同士が、鉢合わせとなってしまったとしたら・・・?〕
ゼ:―――ねえ・・・あなた、ちょっといいかしら?
イ:(ぅン?)―――あなたは・・・
(もしかするとこの子の母親? だとしたら厳しく云っておかなければ・・・)
ゼ:ここの―――関係者です。
それにしてもあなた、その人がどういう存在か判っているの?
イ:えっ―――?
(母親じゃ・・・ない?? それに、ここの“関係者”? しかも―――このお子が、どういう存在か・・・ですって??)
ゼ:(返事をしない―――・・・どうして? やはり・・・誘拐目的なの??)
〔そしてゼシカが訊ねたとき―――やはりそうであるからか、返事をしなかった不審な女性・・・
でも、その不審な女性―――イセリアは戸惑っていたのです。
なぜならば、ドルメンであるはずのここに、一体何の“関係者”?
しかも・・・自分の横に眠っているのが、どういう存在か知っているのかと訊かれた時、
少しばかり返事に窮してしまったのです。
しかし、そのことはゼシカからしてみれば、まさに図星の何者でもないわけであり・・・
すると―――・・・〕
ホ:う、うぅ〜〜ン・・・・・(ぽぉ〜゜)
(あ・・・あれ? この人たち―――誰?? お、お姉ちゃんは??)
ふ―――うぅぅ・・・ぅぅぅ・・・・(ぷるぷる)
ゼ:(あっ―――起きちゃった?)
イ:(いけない・・・ぐずり始めているわ―――)
ゼ:(うぅ〜ンと・・・よし―――)
ねぇ・・・ボク? お姉ちゃんのところへ・・・いらっしゃい?
ホ:(ええっ? でも・・・ボクこの女の人、知らないよ―――)(ヤダヤダ〜)
イ:(頭(かぶり)を振っている―――するとやはりこの人も・・・)
〔周囲が騒がしくなってきたからか、目を覚ましてしまった幼い者・・・
でも、両者とも見知らぬ顔なので、すぐにぐずり始めてしまったのです。
それを見かけたゼシカは、手早く幼君を保護しようとするのですが、
母親や養育者からは、『見知らぬ人にはついていってはいけない』という事を、よく言って聞かせられていた事もあり、
容易にはゼシカの下へは寄らなかったのです。
すると・・・その様子を見たイセリアは、“やはり―――”と、云う事でゼシカの方を怪しむ事となり、
それでなくとも初見から妙な雰囲気だったものが、ここに来ていっそう険悪となってしまったのです。〕