≪五節;自分の名を知る、見知らぬ女性≫
〔するとここで―――丁度幼い者が、寝醒る頃合いを見計らったように、
ドルメンの奥から一人の女性が現れたのです。〕
ア:―――どうかなされたのですか?
ホ:(あ・・)お姉ちゃ―――ん!(抱きっ)
ア:あらあら―――どうされたのです?
ホ:(すん――すん〜)・・・この人たちが―――
ア:(ニコ)そうでしたか―――
ありがとうございます、ゼシカさんに見知らぬ方・・・。
この方を、わたくしがおらぬ間見て下されて・・・。
イ:あ、いえ―――それにしても・・・幼な児一人をここへおくなんて、無用心に過ぎませんでしょうか。
ちょうどここにいたのが、私や―――こちらの“関係者”であるこの人だったからよかったようなものの・・・
ゼ:(えっ? 今・・・なんて―――?)―――・・・。
ア:・・・そうですわね、そのことはお詫びをしないと・・・。
わたくしも少しこの奥でしなければならないことがございましたので・・・。
ゼ:―――・・・・。
イ:そうでしたか―――
(やはり・・・思った通り、こちらの人からの反応がない―――
このことをこの国の衛兵に話しておくかどうかは、すべて私のココロ内次第・・・)
〔もう一人―――この遺構の奥から、おそらく参拝を終わらせたであろう女性が出てきました・・・。
すると幼な児は、この女性には親しい呼称をして傍まで駆け寄ったのです。
しかし―――・・・その女性からの感謝の言葉が述べられた後、イセリアは素直に受け答えをしたのに、
なんとゼシカは黙りこくるだけで、このときには何の返答もしなかった―――・・・
いや、正確に言うと、返答 が 出来なかったのです。
それというのも―――・・・〕
ゼ:(な・・・ナゼこの人が、私の名前を? 初対面であるはずの私の名前を知っているというの??)
〔そう―――彼女・・・ゼシカは、自分の母の古き知己である方からの取り成しで、この遺構へと赴き、
この場所である方とであった―――・・・
かつて・・・七万年前に栄えた国の“皇”にして、シャクラディアの主―――女禍=ユーピテル=アルダーナリシュヴァアラ―――
その精神体<アストラルバディ>に・・・
そして、このお方から、近い未来にここを使用する事になるかもしれないから―――と、諭され、
このドルメン内に寝泊りする形で、システムのメンテナンスをしていた・・・
その最中(さなか)の出来事に、ただ唖然とするしかなかったのです。〕