≪四節;顔に見覚え有き≫

 

 

〔一方のセシルは、特別な目的を持たないでいたので、年賀会の会場を散策していました。

 

すると―――・・・〕

 

 

セ:(あら―――? 誰だか見かけたことのある背後ろ姿だわ・・・

  もしかして―――いや、そんなはずはないわ、だって・・・先生は―――)

 

 

〔数多といる官たちに混じりながらも、ひときわ目立っていた存在―――

その背後ろ姿を、セシルはどこか見たことがあり、また知っている・・・と、しました。

 

けれども、セシルが知りうる人物は、人里離れた処に庵を組み、二度と世に出てくるとは思われなかった―――

そうは思いながらも、彼女の足取りは次第とそちらのほうへと近づいていき・・・〕

 

 

セ:あ―――あの・・・ッ

 

タ:(ぅん?)おや―――これは・・・ セシル=ベルフラワー=ティンジェル 殿ではございませんか。

セ:あっ・・・やはり典厩先生?!! でも・・・どうして先生がこちらに―――

 

官:―――いかがなされましたかな、タケル殿。

タ:ああ―――いえ、ちと顔見知りの者がいましたので・・・

  申し訳ござらぬが、少々席を外してよろしいですかな。

 

 

〔それは―――まさしくその人ではありました・・・

自分の兄と交友があり、自分とも交流のあった人物・・・・

そして兄と同じくして野に隠れたる“君子”が、ナゼ今ここに―――・・・?

 

そのことを問い質したかったのだけれど―――・・・〕

 

 

タ:―――いかがです、一杯。

セ:ああっ―――これはどうも・・・

  それにしても、先生はどうしてここに―――

 

タ:(フフ・・)ワシを訪ねてあの庵へ五度も足を運ばせた御仁がおります。

  願わくば、その御仁の誠意に答えんがため―――

セ:―――そうだったのですか・・・

 

タ:それにしても―――兄上の事、お気の毒ではありましたな。

セ:え??!(ギクッ!) あ・・・兄が何か―――??

 

タ:ワシが訪れた―――そのすぐ後にて、行方をくらませたとか・・・

セ:・・・はい―――

 

 

〔セシルは、自分が認めている異性がどうしてフ国におり、

またこの国の官たちと言葉を交し合っているのか・・・そのことが気になり、理由を尋ねてみました。

 

すると彼の口からは、よろしくも自分を欲するために幾度も庵に足を運んでくれた存在がいることを、物語ってくれたのです。

 

そうこうしているうちにも―――〕

 

 

婀:―――愉しんでおられますかな・・・

セ:(え・・・? あぁ―――っ!!)

タ:ええ、愉しんでいますよ、公主将軍。

 

婀:・・・して、そちらの方は―――

タ:ああ―――こちらの方は、隣国はハイネス・ブルグの・・・

 

婀:“花”の宿将である セシル=ベルフラワー=ティンジェル 殿か・・・

セ:うぅ―――っっ・・・

(まさか―――ヴェルノアの公主である方までもが・・・どうして―――)

 

タ:―――閣下・・・

婀:フ――・・・いや、なに・・・先ほどあちらのほうで“月”に会うたばかりでして・・・なぁ―――

セ:(リ―――リリアに??!)

 

婀:―――しかも、次には“花”に会おうとは・・・

  あと残るは一人―――“雪”はどこにおるのじゃな。

 

 

〔セシルは―――あまりの出来事に声も出ませんでした・・・

それも、前のリリア同様に、どうしてヴェルノアの公主たるお方が、フ国のウェオブリに―――と、云った事に・・・。

 

しかも、またも畳み掛けるような言葉で、セシルに会う前にリリアにも会ったという事実を明かしてきたのです。

 

そう―――つまり・・・“雪月花”の三将が、そろってこの地に来ているという事を、

婀陀那はこの時点ですでにつかんでしまったのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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