≪六節;調略≫
イ:―――しかし・・・理屈では判りましても・・・
婀:やはり―――“上”からの命がないと動けぬ・・・・か。(トントン・・)
(トンッ――☆)ふむ、仕方があるまい―――やはりあの頼み、お受けする意外はなさそうじゃ。
イ:・・・“あの頼み”?
婀:ぅん? ああ―――・・・まあそなたも分不相応な事をなすのじゃ。
妾にもそういうお鉢が廻ってくるのも、是非もないというところのようじゃな。
〔理屈―――今にも南下してきそうな、カ・ルマ軍を牽制する為の国境固めに、
元々ハイネス・ブルグ出身の将校である自分たちがあてがわれるという事・・・
そこは今までの説明により往々に判る事ではありました。
けれども、自分たちはどういう形であれ、一度は故国を見限った者・・・
おそらく次に自分たちの国の官僚たちと顔を合わせたときには、罵倒されるかもしれない・・・・
そこのところの危惧も大いにあったのです。
その事は婀陀那も感じていたことでもあったのです。
それをわかっている上での、この頼みごと――――
ならば自分もそれ相応の事を被らなければならない・・・・
それは婀陀那の、ある覚悟の表れでもあったのです。
実は―――婀陀那は新年が改まる前に、フ国の最高施政官のある要請を受けていたのでした。〕
婀:・・・なんですと? 妾が―――?
イ:―――いやな・・・ワシもそろそろ〜歳ではあるし、
この辺りが潮時ではないか―――と、思うておるのだ。
婀:―――しかしイク殿・・・妾はヴェルノアの公主―――
イ:―――に、よく似た者であろう〜〜?(ニタ〜リ)
婀:うぐっ―――! うむむむ・・・・
〜〜しかし―――そうであったとしても、元々この国の譜代でもない妾が、
この国の 録尚書事 をせよとは・・・
イ:仕方がないぢゃないか―――適当な人材がおらんのだから。
婀:―――し・・・
イ:それになぁ〜〜―――ガク州殿には太傅まで兼任させておるし・・・
その家臣も、おそらくはあの方のお傍を離れまいて。
婀:(ヤレヤレ――)それで・・・妾に『白羽の矢』―――で、ございますか。
この国に来て、ようやく骨を休めれるものと思いきや―――・・・
イ:―――ま、時期が悪かったと思うて下され。
婀:(ふう・・)―――少々、時間を下さりませんか・・・
妾なりに整理―――というか、準備が必要ですので・・・
イ:よい返事―――お待ちしておりますぞ。(ニカ)
婀:(・・・タヌキめ―――)
〔年が新しくなる前―――フ国の最高施政官 司徒 のイクから、
なんと彼が引退をする代わりに、婀陀那を 録尚書事 という役職に推挙したい―――との要請があったのです。
そのことに、当初は婀陀那も渋い顔をしていました―――
それというのも、自分の国ヴェルノアを“影”であるルリ某に任せて、彼女自身がフ国へ来たという経緯も、
『公主』という息も詰まりそうな役割から脱却をし、一将官としてのびのびと生きてみたい・・・と、いうことでもあったのに、
またも一国を背負わされるような役職 “録尚書事”を担ってくれないか――― とのことに、
しかし―――ここに来て、亡命者たちに自分たちの国に帰った上で、国境固めをするよう奨励したという事は、
自分のほうでも眉をひそめなければならない事をなさねばならない―――そういうことでもあったのです。
ですが・・・そのことはイセリアの前では語られる事はなかったのですが・・・
あたら痛み分けであるならば―――ということで、イセリアも認識し、
速やかに婀陀那の指示通り、ハイネス・ブルグの五つの国境の砦へと赴いたのです。〕