≪八節;人事の重要性を知る者≫
〔それはそれとして―――
新年休みを頂いて、今現在は治領であるガク州に戻ってきている州公とその従者は・・・〕
ア:まあ―――婀陀那さんが録尚書事におなりに?!!
タ:そのようで―――
それにしても、国も思い切った人事をしたものです。
あの方は、主上がなされた外交上の締結の下に、フ国へと参入してきたというのに、
それを国政の方針を決める上での、重要な官職に就けさせたというのですから。
ア:・・・そういえば―――私のときでもそうだったなぁ・・・。
タ:―――はあ・・・?
ア:いや―――なに・・・
私も以前セキ殿の下で尚書台の秘書監を勤めていた時期にも、当時尚書令を務めていたイク殿から・・・
『録尚書事をさせてみせようか―――』という打診を受けてね・・・
まあ、そのときはちょうど酒席の上での話しだっだんだけど・・・
タ:そんなことが―――・・・・
ア:けれど、今回はそんな単純な事ではないようだ。
私も、休みが明けたなら太傅の役割の合間に、あの方を元気付けてあげようと思うよ。
〔“正月休み”―――とは云っても、それは王后であるリジュが、
日ごろ忙しいアヱカの事を気遣ってとってくれたようなものでした。
アヱカの本来のお役目は、ガク州を治むること―――
それを我が子可愛さに太傅に就任をさせて、任地より遠く離れるウェオブリへと来させてしまっている・・・
これでは折角掴み掛けていた州民の心が離れてしまう―――
そのことを忠臣でもあるセキやイクが諭してくれなければ、重大な過ちを犯すところだった―――とし、
わずかながらの短い期間でも、アヱカに休暇を与えてやったのです。
その休暇の合間に聞いた―――婀陀那のフ国・録尚書事への就任・・・
このときに、アヱカはまた、以前にもあった自分のフ国官就任の秘話を、
配下のタケルに話していたのです――――が・・・・〕
ア:(しかし・・・前任者のイク殿も、実に上手い身の引き方をしたものだ・・・)
:≪・・・どういうことなんですの?≫
女:≪ああ―――いやなに・・・
私もあの時・・・当時尚書令でもあったイク殿が、私たちに『録尚書事を〜〜・・・』という打診を受けたときに、
とても冗談交じりには聞こえなかったんだ。≫
ア:≪えぇっ―――・・・≫
女:≪どうやら・・・彼は相当前から、自分の引退を念頭に置いた人事をしていた節もあったようなのでね・・・
まあ―――私たちの場合は、あのときが酒席の上であった事と、
意外にも失態ばかり目に付けさせてしまった所為もあったからね・・・。≫
ア:≪まあ・・・そうだったのですか―――でも・・・相当な前・・・って・・・・≫
女:≪まあ―――彼も年齢的に年老いてきてしまっている事だし・・・
それに―――・・・≫
ア:≪・・・? それに―――?≫
女:≪・・・おそらく、これからの世の情勢では、彼の器量だけでは裁量しきれない事も頻繁に出てくる事となる―――≫
ア:≪―――!!!≫
〔このとき―――女禍様は、この時期に引退をし、他国の者でありながらも年若く、自分より器量の大きい者に、
その役割を引き継がせた者のコトを非難しませんでした。
でもそれは、彼の永年の計画によるものであるとし、
また同時に、イクの裁定レベルも限界に来ていた事を薄々ながら感じていたのです。〕