≪三節;お茶目な性格≫
〔でも、今日(こんにち)にはそれは余り相応しいものではないとし、その方が二つの名に語りかけたところ、
またも先ほどと同じように、虹色に輝く光の乱舞が・・・
すると今度は、現在での中間の官位を持ちたる者が、居住としたるところと同じ様式となったのです。
20画ほど前は遺構―――10画ほど前は王侯の居城―――そして今は・・・官吏の居住??
こんなにも三者三様に態を変じられる処が、ここの“真なる姿”―――??
しかも、それを裏付けるかのように・・・〕
ア:どうも―――すまなかったね、ゼシカ。
“少々”とは云ったけれど、“多い”に驚いてしまった事だろう。
ゼ:―――いえ・・・
それにしても~~――――
ア:私は・・・君が出会っていた存在とは違うよ。
確かに―――ここに詳しいのは、私のほうでも“皇”のアストラルバディに会っていたからなんだ。
そのときに、『お前は私の魂を引き継ぐ者である』・・・なんて突然に云われてしまってね。
さすがにあのときの驚き様と云ったらなかったよ、君がここの真の姿を知ってしまった・・・それ以上だったね。
ゼ:そう―――だったんですか・・・
では、あのイセリアという人と私が言い争っていたときに、不意に私の名を呼ばれたのも・・・
ア:(・・・あれ? そういうことあったっけ―――・・・)
あ・・・ああ~~―――そう・・・だね、事前に聞かされていたからなんだよ・・・。
〔その方は“皇”の魂を引き継ぐ存在にして―――また、“シャクラディア”の主たる存在として、
須らく事前の説明を、『“皇”のアストラルバディ』より説明を承った・・・と、しました。
そしてそのときの驚き様も、ゼシカがシャクラディアの真の姿を知ったとき以上だった・・・と、誇張して伝えたのです。
ですが―――つい最近・・・新年が明けた折、イセリアとゼシカが言い合いになったときに、
アヱカが不意にゼシカの名を呼んでしまった事は、どうやらあやふやな様子だったのです。
それは・・・なぜかというと―――〕
ア:(ああ~~・・・危ない危ない、もう少しでアヱカに恥をかかせるところだったよ・・・)
:≪・・・あの―――女禍様?≫
女:≪ゴメンっ―――! アヱカ・・・この通り―――
だって・・・あの時は王子様を挟んで二人の女性が喧々諤々としていたし~~・・・
それに良く見れば、片方はあのゼシカだったじゃないか―――
それで~~つい彼女の名前を言ってしまったようなんだよね・・・。≫
ア:≪あの・・・それ―――って、もしかして・・・≫
女:≪物覚えが素晴らしく酷い・・・ってことだろう―――判っているよ、自分のことだもの・・・
それにね、そういったことは姉さんが一手に引き受けてくれていた事だったから・・・≫
ア:≪・・・・・大変でしたのね、“皇”となられた方でも。≫
〔『物覚えが素晴らしく酷い』―――と、“古えの皇”は言いました。
けれども、往時の施政のあり方や出来事などが流暢に・・・まるで川の流れのように出てくるのに、
ああいった言い争いのような些細な出来事は余り記憶にない―――・・・
しかしそれは、何も“言い争い”という出来事自体が曖昧なのではなく、その当事者同士のことが曖昧なのであり、
つまりそれは、“頂点”に立つ者の性というべきものなのでしょうか・・・
『官という者達は、往々にして下に付くべき者では非ずして、家族と同義である』
―――とは、自分でもよく言っていたこと・・・。
そう・・・つまり家族同士の争いほどみっともないものはない―――と、女禍様は思うのですが・・・
しかし、ゼシカもあの時点では、女禍様ご自身がアストラルバディのときに頼み事をしただけであり、
イセリアもここを訪れたのを、サーチにかけて知ったまでのこと・・・
それを―――言い争っていたときに名指しで呼び止めてしまったのは、『さすがにまづかった・・・』と、ようやく省みられたのです。〕