≪七節;対応に追われるもののふの国≫
〔それはそれとして―――これから危惧しなければならないのはラー・ジャの国・・・
その国では、今、南下してくる漆黒の軍団の対処に追われていました。〕
ノ:何だと―――北方から漆黒の軍旗が?!
チ:そのようで―――隣国の州の一つが攻められていたので、
いつこちらにも―――も思っていましたが・・・
ノ:ふう―――む・・・あいつの云う通りにしておいて、良かったな・・・。
チ:はい・・・ですが、兄上の云われには、防塁を築いていたとしても、
それはかの国からの侵攻を鈍らせるためだけの 策 だとか・・・
ノ:・・・ここは一つ―――あいつに笑われないだけの戦働きをせねばならんか・・・。
―――と、云う事で、八幡殿は壱から廿までを・・・判官殿には廿壱から四拾までを・・・
左近は四拾壱から六拾までを・・・それがしは六拾壱から八拾までを・・・後の残りは兵部少輔様―――よろしく頼みましたぞ。
〔“近々―――かの黒き国からの侵攻がある模様・・・かかる上は<防塁>を築き、これに対処しうるを以(もっ)てすべし・・・”
これは、五度も草庵を訪ねられ、ある人物に説き伏せられて、ついにはその人物の家臣となったという、
元はここラー・ジャの国でも、政治の中核を担っていた事もある者からの信書なのでした。
しかも、今は隣国の州の一つ―――それも、幾度となくカ・ルマから侵攻を受けていたところの・・・と、聴けば、
さすがに手を拱(こまね)いてはいられなかったことでしょう。
だから・・・彼らはこの信書を受けてすぐに、<防塁>を100築きにかかったのです。
そして―――・・・〕
ヨ:(ヨシイエ=八幡=ゲンシ―;男;ラー・ジャ建国以来の譜代の家臣)
(ふぅ・・・む・・・将一人につき、二十の防塁か・・・)
ギ:(ギケイ=判官=ゲンシー;男;ヨシイエとは同門ではあるが・・・彼とはいとこ同士の家柄)
(かの国の兵とあたるのは、これが初めてだな・・・やはり噂通りなのだろうか―――)
チ:(チカラ=左近=シノーラ;男;タケルを実兄に持つ、シノーラ家の次男)
(おそらく・・・この様相だと、激しくなるのは判官殿と弾正殿・・・それと手前の処―――か・・・
なんとしても防ぎきらねば・・・)
ノ:(ノブシゲ=弾正=タイラー;男;タケルとは古くからの付き合いであり、理解者でもある漢)
(左近のヤツ・・・入れ込みすぎているな―――)
ガサ・・≧
むん―――? 誰だ―――・・・