<第六十三章;ネクロフィリア>

 

≪一節:恩義を感じて≫

 

 

〔それは・・・その人が“ある者”だと断定されるのに十分すぎるほどの材料―――

そして、そのことは同時に、その人を中心に世界が廻っていくのを実感させるのに、十分に足りすぎるほどのモノであり・・・

 

その存在が、今ここに―――この暗殺組織の離反者と共にいる・・・

 

人―――その存在の事を“女禍の魂を持ちし者”と云う・・・

 

けれども、ここで一つの疑問が・・・

それは、ヤノーピルの存在―――

 

そのことにゼシカは―――・・・〕

 

 

ゼ:・・・あの―――ヤノーピルさん、私の依頼者の手配書を、

  あなたと同じ存在が持っている・・・って、

  それに、この方の事を“標的”―――って・・・

 

ヤ:・・・・ちぃっ―――

 

ア:ゼシカ―――

ゼ:ですが―――・・・

 

団:しかし、驚きだぞ・・・われらから離反したお前が、

  われらの標的と仲良くなっていようとは・・・なぁ。

 

ヤ:へっ―――、何かとこの方にはお世話になったんでね・・・

  そこんとこの仁義は忘れちゃいねぇのさ。

 

団:ふん―――仁義・・・か。

  では、われらの団員としての仁義は・・・

 

ヤ:当然―――ねえ・・・に決まってんだろ。

  何しろ狙撃で射抜かれたオレを助けもせず、置いてきぼりにしてくれたのはどこの誰なんですかねぇ〜〜

 

  それによ―――例え異種だとはいえ、この坊ちゃんはオレを介抱してくれたんだ。

  まあ、そもそも傷を治癒してくれたのは、こちらの方のチカラのおかげなんだがね。

 

団:ふふ―――まあいい、どの道お前たち二人と、目撃者は消さなければいけないのだ、

  覚悟は出来ていような。

 

 

〔元を糺(ただ)せば、ヤノーピルも“シュヴァルツ”の一員であり、

アヱカの命を狙う側の者でもあったのです。

 

けれども、命の危険に晒されたとき、寸でのところでアヱカとホウ王子に救われたとき、

自分を見捨てた者よりも恩義を感じていたヤノーピルは、

一度アジトに戻り、一芝居を打って組織から脱退するのと同時に彼らの下へと来たのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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