≪三節;未だ知らぬ“故国”の謂われ(その二)≫
〔その人は、自分の身に危機が差し迫ってきたとき、ある言葉を発しました。
その言葉こそ・・・
“ テ ラ
”
そのことに、その人と一つの身体を共有している別の魂は驚いたのです。
なぜならば・・・その固有名詞こそは、すでに亡んだアヱカ本人の―――故国・・・
そして、シュヴァルツの団長が、武器を片手にアヱカに飛び掛った―――
けれど、その刃はアヱカの身体に到達する事はなく、
逆に、ナニか別のチカラによって手折られてしまったのです。
しかし、その“なにか別のチカラ”こそ―――・・・
=シルフィード=・・・暗殺者の刃と、アヱカの体の間を阻んだのは、大気の流れである『風』。
幾層もの大気の流れは厚い隔たりとなり、常識では考えられないほどの負荷を与え続けた事より、
その刃は折れたものと推察される。
そう―――『風』という、世の理を成す 大気 の別の顔・・・
時には、優しく頬を撫で・・・時には激しくも荒ぶれるそれ―――
そのことを、一人の女性が、意のままに操っていた―――と、云う事実・・・〕
ア:・・・お前たちが成そうとしていた事が、無駄だということが、これで分かってもらえたかな。
団:うぐ・・・退け―――退け〜〜い!!
〔“何も出来ない”―――と、思われていた存在が、垣間見せたその実力は、
とてもシュヴァルツ如きでは敵わない―――と、判ると、団長は一旦この場を退くことにしたのです。
けれども、アヱカは彼らの後を追ってまでも―――ということはしなかったのです。
それというのも・・・〕
ヤ:な・・・なあ―――あんた・・・ちょいと聞きたいことがあるんだけどよ・・・
ア:――――・・・・。
ヤ:――――なあ?
ア:・・・ゴメン、ちょっと疲れたよ・・・少し・・・休ませて―――
ゼ:ア、アヱカさん―――
ホ:お姉ちゃん―――・・・
ア:(女禍様・・・)ありがとうございます・・・ご心配をおかけしまして―――
でも、少し休ませて下さい・・・。
〔アヱカは、シュヴァルツたちを追い払うと、精力を使い尽くしたかのように、その場に膝を付いて項垂(うなだ)れてしまいました。
しかし、それは仕方のないこと・・・
それというのも、満足のいく調整をしないまま、つまり万全ではない状態で チカラ を解放をしたということ・・・
そのことによる疲労感がたまってしまい、その人は一時(ひととき)の休息を余儀なくされてしまったのです。
けれども、そこには疑問も数多く残されたまま―――・・・
天才的魔術具師の後継者に、フ国の幼王子、元・暗殺集団の黒き翼の人―――
そして・・・“古えの皇”の魂と、一つの身体を共有している存在―――
次には、質問攻めに遭うだろう事を知りながら・・・その方は浅くも広い眠りに堕ちていったのでした。〕