≪六節;未だ聞かぬ地名≫
〔それはそれとして―――師の指示通り、ボクオーンという者が目論んでいることの一部を知り得てきた高弟は・・・〕
ガ:ほぉう―――そんなことが・・・
ビ:はい―――総て盟主様の読み通り、彼女たちの出身は・・・
ガ:“陽の沈みたる処”・・・・その者達が、こちらに流れてきてる―――ってかい・・・
ヤレヤレ、どうにも今までサボってきたツケが、いよいよ廻ってきてしまったようだねぇ。
ビ:―――いかがなさいましょう。
ガ:・・・・それはそれとして、これとは別に気がかりな事が一つあるんだが―――
よもやとは思うが、“ラゼッタ”と“デルフィーネ”の屍骸は・・・
ビ:そのことでしたらご心配をせずとも―――
『龍皇』様のご遺体は、ひっそりとした誰も判らぬ場所にて埋葬されております。
それに、マエストロ様のご遺体に関しましても、あの方が亡くなられる際、
こういったこともあらんことよ―――と、荼毘に臥した上で、その骨ですら打ち砕いて大地の浄化と成しました。
ガ:ならいいんだけど―――・・・
(それにしてもなんだろう・・・ここ最近、どうにも胸の痞(つか)えが拭い去れない―――)
〔“その高弟”が得た情報―――どうやら不貞の屍術師は、身元不明の彼女たちを動かせるまでにし、
<不死の軍団>を作り上げようとしている・・・と、云うこと。
それに、“師”が一番知りたかった情報―――身元不明者たちの、明らかなる出身地・・・“陽の沈みたる処”。
このガルバディアには存在すらしない地名・・・
だから“師”はそこで焦りを覚えたのです。
遥か昔に隔離したはずの土地と土地―――それらが求め合うようにして近づいてこようとしていることを・・・
そのことよりもガラティアが危惧していたこと―――
それは、かの屍術師の手により『ラゼッタ』『デルフィーネ』という名の持ち主の遺体が発(あば)かれていないか・・・と、云うこと。
しかしそれは杞憂に過ぎる事だと、“その高弟”より諭されたのですが・・・
唯一つ―――ガラティアの心の隅に蟠(わだかま)っていたこと・・・
その蟠(わだかま)りは、また一つの未来へと通ずる事になってくるのです。〕