≪四節;祝福されぬ事≫

 

 

〔そのカラクリを解き明かす鍵は―――この三週も前・・・場所はカ・ルマのコキュートス、

あのネクロマンサー・ボクオーンの部屋にて・・・〕

 

 

ボ:むひょひょひょ―――この二年と十三ヶ月という期間、無駄ではなかったぞ・・・

  ここに我輩の最高傑作とも呼べるモノが出来たのだからなぁ〜〜。

 

  まあ―――残りの八体は、この三体に辿り着くまでの試作体と考えれば、無駄な浪費とは云えまい。

 

  それに、どうだ―――見るがよい、この美しき肢体に崩れる事のない筋肉・・・

  それもこれも、お前の手助けによって、この者達がもつ本来のスキルや記憶が完璧に蘇えっておるではないか。

 

  もし、この試作体が魔将たちに認められれば、我輩のここでの地位も磐石のものとなる、

  そうなった暁には、お前を重く用いて進ぜようぞ―――・・・

 

  それに、この技術が量産化できるともなれば、次からは一般兵にも施してやらねばなぁ〜〜・・・

  むひょひょひょひょ〜〜――――

 

 

〔そこに居り、また不気味なまでの含み笑いをしている者は、

この部屋の持ち主である 屍術師<ネクロマンサー> のボクオーンという者と、

なぜかその傍らには、自らが率先して協力を願い出ていた『禽』の=鴉=であるシホなのでした。

 

しかも―――そこにある三つの屍体・・・ノゾミ某に、カオリ某に、チヒロ某・・・

まるで生きていたときと同じような状態で存在している肉体の持ち主たち・・・

 

けれども、未だこのときは 魂 が吹き込まれていなかったので、ただの肉人形と変わりはないのですが―――

 

それでもボクオーンは嬉々としていたのです。

 

それもそのはず―――人は死ねば、生前の記憶など失ってしまうはずなのに・・・

なぜかしらその三人は、過去の事をよく覚えていた―――と、云うのです。

 

どうして―――・・・?

 

それこそは、シホ―――いえ、 死せる賢者 であるガラティアのなせる業・・・

 

では、どうして彼女は、こんな禁忌の事業に自らが率先して協力しようと思ったのでしょうか・・・・〕

 

 

ガ:(フフッ―――今はそうやってせいぜいぬか喜びをしているがいいさ・・・

  まあ―――やつらの技術でも、そのうち成功していたんだろうが・・・・

  この私が知覚し、加担するからにはそうは行かないよ―――)

  ―――けれど・・・あんたたちには申し訳ないことだと思うよ・・・。

  自分たちが手塩にかけてきた可愛い子達を、ひょっとするとその手で壊してしまうかもしれない・・・

 

  でも―――そこはあんたたちの方でも、よく考えた上で行動をしておくれ・・・

 

 

〔すでに、安寧な眠りに墜ち―――来世への輪廻を夢見、約束された者達・・・・

 

けれど、この行為は輪廻を曲げる法―――『外法』『邪法』・・・・

決して赦されるべきではない行為―――・・・・

 

そのこととは判っていながらも、手を貸したガラティアの真意とは―――

一体いずこにあるというのでしょうか・・・〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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