≪六節;畏れるべき存在=神≫
駒:な・・・ナニ? こ―――これは!!?
蜂:この者・・・段々と態が変じて―――いや、しかし??
なんだというのこの震え・・・震えがとまらない!?
様々な・・・あらゆる恐怖というものを克服するよう訓練してきた、この私たちが―――??!
雲:この“恐怖”―――・・・あたしたちが打ち克ってきたモノとは質が別格?!
あたしたちが打ち克ってきたのは―――いわゆる日常の“恐怖”・・・
でも、こいつが持っているモノは・・・もしかすると“神”の―――??
駒:バカな―――!? では私たちは今“神”と対峙しているとでも??
あんな存在などいはしない・・・いたのならば、苦境に立たされている我が祖国と―――
あの“魔の山脈”での悪夢の出来事を見て、助けて下されたはず―――!!
そこにいるのは・・・所詮騙り者!!
〔そこには・・・灰褐色の髪と、それと同系色の眸を持った女性が、今までいた―――
はずでしたが・・・
それが、まるで立体的な画像処理を施されたかのように態を変じていき―――
そこにはその女性の元の姿・・・
緋色の髪―――瑠璃色の眸―――黒色の導衣・・・
そして、左手には、青黒い晄りを放つ一振りの 大剣 ―――・・・
それによって、より一層畏怖の度合いが濃くなっていき―――〕
ガ:ヤレヤレ―――ひどい云われようだねぇ〜。
・・・ま―――仕方がないんだけどさ・・・
駒:お―――おま・・・え・・・(ワナワナ)
ガ:―――そ、これが私本来の姿さ。
まあ、こっちにもいろんな事情っつぅもんがあるんだわよ。
―――それよりも・・・見たところ何の障害もないようだねぇ。
うん、重畳重畳〜♪
蜂:お前は――― 一体・・・
ガ:おっと―――そういえば、自己紹介がまだだったね・・・本当の意味での―――
私は、 ガラティア=ヤドランカ=イグレイシャス ―――
この世で唯一の“不死の身体を持つ魔導士”―――<死せる賢者>といえば判りやすいかね。
駒:し―――<死せる賢者>・・・リッチー??
でも・・・この神々しいまでの存在感は―――・・・
ガ:あ゛〜〜そっちのほうはとっくの昔にやめちゃったんだけどねぇ。
そうは云っも―――ほんの100万年前・・・なんだけども・・・
雲:ひゃ―――100万年前??
蜂:また・・・なんの悪い冗談を―――100年の間違いでは?
〔その緋色の髪の女性は、紛れもなくその総てにおいて頂点に立ちうる者・・・
総ての理(ことわり)に通じ―――また、紡いでいく存在・・・
それは―――“神”と同義であり・・・けれども、その者は云ったのです。
『“そう”ではない―――』
と・・・
では、一体何者―――?
それは・・・『次元の狭間』に身を貶めていたが故の、“不滅”なる存在・・・
自身ですら、認めてはいない―――矛盾した存在・・・
ですが―――ガラティアの洩らした一言に、三様は色めき立ったのです。
それもそのはず・・・100万年という単位は、
偏(ひと)えにはヒューマンはもとより、地上にあるどの生物も紡ぐことのできないはず・・・
それを、このガラティアなる者は、往年の瑞々しさを讃えたまま―――
再び、この時よりその者の存在意義(レゾン・デートル)が紡がれようとしていたのです。〕