≪八節;真の“禽”たち―――≫
〔それはそれとして―――ここに来てようやく三様の実態・・・
フ国にて自分たちの同士たちに顔を見せ・・・ご挨拶をしてきた者達が明らかに―――〕
ノ:(ノゾミ=ソーラク=バレンタイン;女;28歳(死亡当時);一説によるとナオミやユミエたちと故国を同じくにする者。
今回の一件でフ国を訪れた際には“バーディ”と名乗る。 ちなみに生前は『駒鳥』と呼ばれていた。)
ただいま帰還いたしました―――盟主様。
カ:(カオリ=セーズ=ハイドリヒ;女;27歳(死亡当時);一説によるとナオミやユミエたちと故国を同じくにする者。
今回の一件でフ国を訪れた際には“サグレーラス”と名乗る。 ちなみに生前は『蜂鳥』と呼ばれていた。
彼女たち三人の死因は、ヴァーナム山脈にあるらしいが・・・?)
どうやらかの国はあなた様の読み通り、混迷の度合いを深めている模様です。
チ:(チヒロ=トレキデム=キンメル;女;25歳(死亡当時);一説によるとナオミやユミエたちと故国を同じくにする者。
今回の一件でフ国を訪れた際には“ラーク”と名乗る。 ちなみに生前は『雲雀』と呼ばれていた。
どうやら=鵙=であるマキとは肉親の関係であると目されている。)
それに―――おそらく世代の交代が、近々行われるもの・・・と―――
シ:そうかい―――ごくろうさんだったね・・・
辛い仕事だろうが、もうしばらくの間、辛抱しとくれ。
ノ:・・・われらはすでに滅んだ身―――
カ:それが・・・辛かろう―――などとは・・・
チ:逆に黄泉返らせてもらえて、感謝をしております―――ガラティア様・・・
シ:・・・あの子達に会ったんだね―――どうだったかい・・・。
ノ:―――・・・。
カ:―――・・・。
チ:―――・・・。
シ:・・・そうかい―――もし、辛いんだと思うんなら、気の済むまでこの身を・・・
ノ:―――次のご指示を。
カ:私たちにはそんなことを考えておる暇(いとま)すらありませぬ―――
チ:それに・・・あたしたちはすでに世の理より外れております―――
〔当初―――シホより与えられていた任務は、小手調べもいいところ・・・
しかし、それは彼女たちを小バカにしているという意味合いではなく、
長い間のブランクと云うものがあるから、身体や勘が鈍ってはいないものか―――と、云う意味合いが強かったのです。
それが、結果としては上々で、須らく任務のほうはこなしてきた―――
ただ―――シホからは知らされていなかったので、フ国に自分たちと同じ雰囲気がする者達がいるとは思わなかった・・・
そこで、懐かしさあまって覗いてみることにしてみれば―――それは自分たちの生が終える前に別れた同士たち・・・
―――大丈夫・・・私たちが後を託した者達は、無事こちらに辿り着いており、生を繋いでいる・・・
私たちが心配する余地など、どこにもありはしない―――・・・
私たちが・・・捨石になった意味は、十分にあった―――
唯一つ―――心残りがあるとすれば・・・私たちの故国の『姫君』の安否が気遣われるということ・・・
もし―――この四人と、一機が生き永らえていたとしても、
“真”のメッセンジャー(伝達人)である彼女が亡くなっていれば、総てが台無し・・・
けれど、そのうちの三人と会ったことで、その心配も無用であると感じた―――・・・
彼女たちの故国―――そこで当初より結成された『禽』・・・その“真”の頭―――
長らく裏の稼業で生を紡いできた彼女たちの下に、国の重臣たちから・・・
“姫君”を主と仰いだ上で、聳え立つ“魔性の山々”を越え、
その果てにあるという<エル・ドラド>(黄金郷)を探し当て、援助を請う―――・・・
犠牲はいくら付いても構わない、彼女たちにかけられた罪過の総てを反故にする―――・・・
そういう条件付で・・・
実際、犠牲は多く付きました―――
彼女たち三名を含める十余名・・・そのほとんどが、ヴァーナムの魔性に呑まれ、
或る者はまるで眠るように―――或る者は身を切られるかのような寒さの中で・・・
そして、それはやがて彼女たち三人までも―――・・・
それから後のことはよくは判らない―――・・・
この命と引き換えに、残りの四名と一機を越山させたけれども、果たして“姫君”は無事だったのだろうか―――?
けれども・・・今回、生き残りの三名が、よろしく統率の取れたままで自分たちの迎撃に当たった・・・
その場にはいなかったけれども、一番初めに出された指令は未だに生きている・・・
あの“姫君”は、この地で行き続けてくれている―――
これで・・・もう・・・心残りは、ない―――と・・・〕
To be continued・・・・