<第六十五章;時代の風>
≪一節;一つの時代の終焉≫
〔『禽』たちが、何かしらの情報を探り出すために、フ国に進入してきた者たちと激しい火花を散らしていた頃。
長らく病床についていた方の病状に、或る変化が―――・・・〕
王:うぅ・・・・ぐ―――ぐほっ!げほっげほっ!!
リ:殿―――?! お、お気を確かに・・・
だ―――誰か!至急典医を! 医者を〜〜!!
〔夜半未明に―――急に病状の悪化したフ国王は、激しい咳と共に何度も嘔吐を繰り返し、
一転して危篤状態に陥ってしまったのです。
それゆえ、かかりつけであった王族専用の医者も、現在の病状を診るに、もう先は長くないという判断に到り、
早急に近親者を呼ぶように促せたのです。
―――が・・・
なぜかその場には、跡目を継ぐ太子ヒョウの姿はありませんでした・・・。
―――とはいえ、一刻を争う状況だったため、彼を待たずして、
危篤中の王に最後のお別れをするため、集まった者達は・・・〕
リ:との―――・・・あなた・・・あな・・た・・・
ホ:父さま―――目を開けて・・・しっかりして・・・
イ:(英雄―――ここに去れり・・・か。)
〔危篤の王の下に集ったわずかな近親者・・・
それは彼の妻であったり、彼の血を引く子息であったり、昔からの悪友同士であった―――
けれども、その場には彼の跡目を継ぐ太子や婀陀那・・・
ましてや、幼王子の太傅であるアヱカもいなかったのです。
それはどうしてだったのでしょう―――
太子であるヒョウは、長い闘病生活を送っていたこともあり、未だに自宅療養の最中でもありました―――・・・
方や、婀陀那は、国王が重篤の身であったとしても、録尚書事という職に就いているから、
片時としても政務を見ないわけにも行かず、しかも他国出身者であったために、
危篤の床に行きたくともいけない状況にあったのです。
それでは、アヱカは―――・・・〕