≪三節;父王崩御の報せ≫
〔その言葉を、“古えの皇”ご自身の口から聞き、太子はどことなく恍惚に浸っているようでした。
それからしばらくの時間が経ち―――この別邸に、慌しく駆け込んできた城からの使者があったのです。
しかし、これはもちろんの事―――・・・〕
使:ご注進にございます―――!
ア:(来たか・・・)何事でしょう―――
使:あぁ―――これは太傅様・・・こちらにおられましたか。
実は―――
ヒ:・・・父が―――亡くなられたか・・・
使:ご存知でしたので―――?
では―――・・・
ヒ:いや―――太傅殿からはそのような事は聞いてはいない。
ただ、私自身がそうではないか―――と、したまでだ。
それに彼女は、幾度となく挫けそうになった私の心を支えてくれた唯一の人間・・・
どうしてか私のココロを曇らせるような事をとろうはずもない・・・
〔その使者は、紛れもなく父王の薨去(こうきょ)の報せを携えてきた者でした。
しかもこの使者は、“父王薨去”の報せと同時に、太子であるヒョウにあることを迫るための役目も仰せつかっていたのです。
それこそが―――今は亡き王の“遺言状”の意思通り、太子を新国王に奉るための意思確認・・・
もし、彼の者が強く拒んだとしても、それが父王の遺志なのだから―――と、云うことを説得させるために、
その“遺言状”の 写し までも携えてきていたのです。
それに―――・・・ショウ王崩御の未明より、ウェオブリ城から姿を眩ませていた太傅のことも気がかりだったのですが・・・
ここに来て、その太傅が次代の王の傍にいるということを、この使者は、ショウ王が亡くなられもしないうちから、
その報せを届けていたのでは―――という思案に駆られたものでしたが、
すぐにその疑問は、次代の王の言葉によって打ち消されてしまったのです。
そして、ヒョウも付け加えるに―――・・・〕
ヒ:この方はな―――父の次に王になるべくは、私でなければならない・・・と、常に私に強く云ってこられたのだ。
だが―――私には重責に余る事だから・・・と、そんな弱音を吐くと、亡き母のように激しく叱咤してくれた・・・
『ヒョウよ、それでもお前は、父なる“烈王”と、この妾の子息か―――』と・・・
お前には聞こえるか―――いや、何も聞こえまい・・・既に死してしまった者の言葉など・・・
だがな、私にはよく聞こえるのだ、亡き母・・・キョウカの、厳しくも優しい―――あの言葉が・・・
使:太子様―――・・・
ヒ:しかし―――父が死なれてしまったことで、この私の肚もようやく決まった・・・。
淑女のように、いつまでも愚図愚図としていては、ご先祖様からも見放されよう―――
使:――おお、それでは!
ヒ:うむ―――不肖病床の身ではあるが、一両日には身体を動かせられるようにし、
改めて次王の戴冠の儀を行う事といたそう―――。
〔病弱な太子は―――しかし、強い口調で次代の王となる宣誓をしました。
それを見て、この病弱なる方を玉座に迎えても良いものか―――と、疑ってかかっていた使者も、
一体どこからそんな力強さが沸いてくるものか―――と、驚きもしたのですが、
その反面、この力強さが、見せ掛けではない事を望んでいたのも、また事実だったのです。〕