<第六十七章;暴政の世>
≪一節;不吉の星≫
〔“烈王”死スル―――その報は何も使者によって各地にもたらされるでもなく、
各国の実力者程度ならば、天文を観ただけで判ることでした。
殊に、サ・ライの教皇 ナユタ=ディーヴァ=シルメリア と、
クー・ナに駐屯しているカ・ルマ軍の カイン=ステラ=ティンジェル は、
――紅く燃え尽き、やがて消えゆく将星――
そのことによってフ国王の訃報を知りえたのです。
一方―――カインと同じくカ・ルマに与し、本拠であるコキュートスにその身を置いていた者達は、
その天文とはまた別の方角の天文を観て、憂悶をしていたのでした・・・。〕
カ:あ・・・・あぁ――――あれは・・・!(ワナワナ)
チ:し・・・“死兆星”―――!!? あの・・・不吉の星が!!(ブルブル)
ノ:――――・・・・・。
カ:ノゾミ? まさか・・・あの星は―――
ノ:いや・・・それにしては少し方向が違う―――あの方向は・・・ウェオブリ。
チ:ほ・・・なんだ、そうなの―――よかった。
あの方の身に、もし万が一のことがあったら・・・
ノ:そうね・・・・。
(それにしても不吉な―――私たちの生の可能性が断たれたあの時、
この頭上に落ちたあの蒼星が・・・また誰かの頭上に落ちた―――)
〔今も昔も変わらない天文の“座”―――そのうちの北斗七星の傍らにひっそりと光る蒼白い星・・・
またの名を―――“輔星”・・・
ですが、彼女たちはまた別の意味でその天文を捉えていたのです。
それこそは『死を兆す不吉の星』―――“死兆星”・・・・
この不吉の星の光が、また色濃く現れ、煌いていた事に、彼女たちは戦慄(おのの)いていたのです。
そして、このことはもう一方のこちらの方でも・・・〕
ビ:盟主―――ガラティア様・・・
シ:フフフ―――ン♪ あの星は確かに不吉を兆す星・・・だけど、
これから訪れようとする時代を考えると、吉兆の星―――と、捉えてもおかしくはない・・・
ビ:いよいよ―――で、ございますか・・・
シ:ああ―――そういうことだね。
ンじゃ・・・まづ手始めに、例のヴェクサンシオンの使い手どもを消しておこうか。
〔シホとビューネイも、この輔星の存在を“不吉の星”―――と、捉えていました。
しかし、シホにとってはそれは別の意味・・・
これから時勢が激しく移り変わり、やがて大きな一つのモノに集約していくのを、
既に感じ取っていたのです。〕