≪三節;シャクラディアへの遠乗り≫
〔こうして―――現フ国王の横暴ぶりに手を焼き始めたこの国の官僚たちは、
もう一人の録尚書事である婀陀那に、事の次第を報告に上がったのですが・・・〕
婀:なんと―――陛下がセキ様を罷免?!!
官:はい・・・しかも、以前のあの方からは考えられぬ怒気と覇気で、
一時(いっとき)はセキ様の首を刎ねろとまで・・・
婀:ふぅむ―――・・・
官:右録尚書事様―――いかがなさいましょうか。
〔もう一人の録尚書事であり、前将軍であった婀陀那は、セキとはまた別の形で呼ばれていました。
それに、古くからヒョウを知るこの人物は、今の報告に苦慮するしかなかったのです。
あたら・・・彼がその命を縮めてまで、暴政に力を傾けんとするのは、
あの決意に満ちた眼差しを見て判っていた事・・・
しかし、これでは急(せ)きすぎるのではないか―――
そう思いながらも、ある一つの考えがあることを口にするのでした。〕
婀:やはりこの上は、あの方にご相談するしかなさそうじゃな。
官:は? イク様―――に、で、ございますか?
婀:いや―――・・・
よし、ではこれより妾は遠乗りに出るとしよう―――
官:な、なぜ? この一大事に―――・・・
婀:ふふ―――そうは申しても、こういった難局に頭を悩ませたとあっては、
一度すっきりとさせねばならぬからな。
そのお陰で良い考えも浮かんでくることじゃろう―――
では、後々の事、よろしく頼みましたぞ。
〔婀陀那の政治的手腕はまさに優れたものでした。
時には厳しくもあり、時には優しくもある―――この飴と鞭の使い分けが実に巧妙・・・
そんな婀陀那でも、さすがに今回の事だけは苦慮していました。
するしかなかったのです―――・・・
喩え―――父の代からの忠臣の言葉でさえ煙たがり、耳すら貸そうとしない現フ国王・・・
誰しもが、“こんなはずではなかった――”と、思う中、
婀陀那もきっとそう思っていることだろう・・・そして何らかの手立てを講じてくれるに違いない―――
そのように期待はしていたのですが・・・
しかし、彼女からは何の対応策も講じられる事もなく、ただ・・・
こんな事態であるにも拘らず、婀陀那は気分転換のための、馬の遠乗りに出かけると云い出してしまったのです。
その言葉は―――誰の眼からも、厄介ごとから逃れるために・・・と、そう映っていた事でしょう。
ですが、婀陀那が馬の遠乗りに選んだ場所―――そここそは・・・〕