≪四節;迎撃戦≫
〔それはそれとして―――ベルルーイに駐屯していたセシルは・・・
物見である兵士から、元クー・ナの拠点である二つの砦から、
現在守備の要となる将を欠いているエルランドを侵攻するとの報告を聞き、
イセリアがいなくなった穴を、どう埋めるべきかの検討をめぐらせるべく、
急遽各砦に散らばっていた同士たちを招集したのです。〕
リ:セシル―――またカ・ルマのやつらが、侵攻しようと企んでいるんだってね。
ギ:よし―――この戦、篭城をせずに野戦にて片をつけるべきだ。
ミ:そうですとも、何も敵勢をこちら側に入れる道理などない!
〔同士であるイセリアを欠いた四人は、彼らが駐屯している砦同士が近場であった事から、
一つの砦が攻められているときに、十分にお互いが援護出来うる立場にあったのです。
しかも幸運な事に、カ・ルマ軍の二つの砦から出撃した軍団は、
その進行が遅々としており、当初の目標でもあったエルランドに行き着くまでに、
彼ら四人の隊に阻まれてしまったのです。
それに―――どういったわけか、カ・ルマ軍の動きはその当初から精彩を欠いたまま・・・
よくもこんな士気の低い状態で侵攻戦を行えるものだ・・・と、半ば呆れもしたのですが―――
今回の迎撃戦で、実に際立っていたのはリリアの用兵・・・
彼女たちの擁する四つの軍を自在巧みに操り、敵であるカ・ルマ軍を手玉に取っていたのです。
しかも、彼女の打ち立てた戦術が、各要所毎において見事にはまり、
ただ、カ・ルマ軍においては敗走するしか手立てがなかったようなのです・・・・が。〕
リ:ごくろうさま―――
セ:いえ―――・・・
リ:どうしたの、セシル―――
セ:・・・気の所為だといいのですけど、今回のやつらは非常に脆かったわ。
それに、あの撤退ぶりにしても―――
ギ:考えすぎだと思うぜ―――セシル殿。
やつらの出鼻をくじいたと思って善しとしようじゃないか。
―――なぁ、ミルディン。
ミ:・・・確かに、あの撤退ぶりはどうも芝居がかっているようにも見えました。
―――が、わざわざ・・・向こうから侵攻を仕掛けておきながら、そうするというのもまたおかしな話・・・
ギ:おいおい―――余り深く考えすぎるというのも、どうかと思うぜ。
リ:それもそうね―――それに、今の私たちがなするべきは、堅く護って勝つ戦・・・
ヤツらのように侵攻して勝ちを拾うというものではないわ。
〔彼ら四名のうち、その二名の意見が合致していた事―――
それは、この戦によるカ・ルマの撤退が、予めそう計画してあるかの如く、仕組まれでもしていたかのように、
実に見事だった・・・と、云う事。
ですが・・・わざわざ侵攻を仕掛けておきながら、どうしてそのような無駄なことをするのか―――?
確かに、カ・ルマと敵対しているリリアたちにとってはそうなのですが・・・
この敗戦により、そこに本来の目的である獲物をおびき寄せる結果となっていたのです。〕