<第六十九章;ヴェネフィックの最期>
≪一節;準備万端≫
〔この頃では、次なる砦の攻略に身を乗り出すでもなく、
実に―――三日三晩に亙(わた)っての、飲めや歌えの大宴会を催しているカ・ルマ軍。
しかし―――もうこのとき既に、例の一件の下準備は着々と進められていたのです。
今・・・そのことを確認しあう、首謀者たちは―――〕
カ:良いな―――・・・ヨキのほうは私が何とかするから、
ヒヅメ殿のほうは―――・・・
ヒ:―――判っていますよ。
アタイも、あんな女・・・最初(はな)ッから気に喰わなかったんだ。
カ:そう―――敵意をむき出しにするのは一向に構わんが、声を上げられぬよう確実に仕留める事だ・・・
もし、声を上げられもして、援けでも呼ばれでもしたら・・・
ヒ:そこんとこは、ご心配無用―――ですよ・・・
こう見えても、アタイは忍術を会得してるんだから、人を欺くのはお手のもんサ。
カ:フッ・・・頼もしい限りだ―――時にギャラハット殿・・・
ギ:うむ―――人を謀(たばか)るというのは、どうも性に会わんが・・・
ここは一つ、歩調を合わせんといかんか・・・な。
カ:では―――・・・手筈通り、よろしく頼みましたぞ。
〔人知れず・・・闇にて其を滅す可(べし)―――それが例え、歴史上に名を連ねる事はなくとも、
舞台裏の立役者のようなものである―――・・・
とは―――、後にこのときのことを知りえたお方の、かの者達に送られた最大の賛辞とも云えた事でしょう。〕