≪三節;一つのロザリオを廻る“縁”≫
〔そして姫君、今は自分の居場所でもある、女頭領の部屋へと、その脚を向かわせたようです。
ですが、その部屋に行くには、女頭領が業務を執り行っている部屋―――「執務室」を、通過しなければならず・・・・
すると、そこにはなんと・・・・〕
ナ:―――以上が、今回の取り分です。
婀:む、そうか―――― あい分かった・・・下がっ・・・おや?
ア:あ・・・っ、申し訳ございません・・・。
お取り込み中だったとは・・・気がつきませんで・・・出直して参ります。
婀:フフ―――・・・いや、待たれよ―――・・・・
ア:はい―――?
ナ:(ぅ・・・ん?おや? この女性の胸元に光るモノは―――・・・?)
――――は・・・・ぁああ・・・・!!
ア:あ―――・・・あの、どうかなされたのです?
ナ:う―――・・・・うぅっ・・・・。
(ま、まさか・・・・この女(ひと)が・・・?)
婀:(フ・・・どうやら気付いたようじゃな。)
いかが―――なされた、鑑定士殿。
ナ:あっ―――あの・・・もしや、この女(ひと)が身につけている、ロザリオ――――・・・・って・・・
ア:えっ―――? わたくしの・・・このロザリオが、どうかなさいまして?
ナ:(「わたくし」――――の?)
それじゃあ・・・・やっぱり―――・・・
婀:如何にも―――このお方自身の持ち物・・・と、いうことじゃよ。
〔そう―――数奇な運命は、またも流転を始め、今度は姫君と鑑定士をも結びつけたのです。
以前に、自分の幼馴染がこの姫君よりスッてしまったものを、言いがかりをつけ自分のものにし―――
しかも、今度はそれを出しに、女頭領を相手に自分にだけ有利に取引が運ぶように事を進めんと持ちかけたところ―――
彼女に強奪せしめられた―――・・・・
いうなれば、一つの装飾品をめぐって、今ここに三者が会(かい)してしまっている・・・・と、いう事―――
(ですが、姫君には、どういう事か起こっているか、余り存じ上げていないようです。)〕
ア:それよりも―――・・・このわたくしのロザリオが、どうかいたしたのですか?
ナ:い、いえっ―――その・・・・ッ・・・
婀:フフフ・・・・素直に申されたらいかがかな?鑑定士殿・・・。
ナ:えぇっ?!
ア:(え・・・・?)
婀:そのロザリオ・・・・淋しげに、道端に打ち捨て置かれておったところを、お主が見つけ――――
妾に処分を求めようとしたところを、妾の強奪におうてしまったのだ――――と・・・な。
ナ:(ぇえ?? ど・・・どうしてこの人・・・そんなウソを・・・)
ア:ゴウ・・・・ダツ??
婀:うむ―――云ったはずなのですがなァ・・・・
―――「妾の組織の一員が、偶然にも拾い、その造り込みに惚れた妾が、これを貰い受けた」・・・と、な。
まぁ・・・言葉の表現の仕方に、多少の差異が生じてしまった事は否めぬ事ではありますが・・・
そのロザリオの出所(しゅっしょ)の由縁(ゆえん)を聞くに及び、なにやら得体の知れぬ重圧を感じた事には相違ない・・・・
つまるところ、妾にとっては、災厄の何者でもなかった事ですよ・・・・。
ア:そう・・・・だったの、です・・・か。
(それにしてもこの方・・・・どうしてそのような事を―――・・・)
ナ:(た―――・・・確かに・・・あの時、あたしはこの人のヒジ鉄を喰らって、そのロザリオを奪われたけど―――
でも、あたしだって、それを出しにここの専属の鑑定士に収まろうとしてたんだ・・・・
それを・・・何も、そこだけを大げさに言わなくっても―――・・・・)
〔この時・・・女頭領は、なぜか姫君のロザリオが、どうして彼女の手元に戻ってきたか・・・の、経緯を、
半ばウソ―――半ば真実を交えた上で、改めて姫君に伝えたのです。
しかし―――その行為は、云ってしまうならば、女頭領自身を「悪」に貶(おとし)めてしまう事・・・・
それであるがゆえに、鑑定士も、姫君も・・・・―――なぜ?―――・・・と、思ってしまったのですが・・・
両者共々、どうして彼女が斯様な行為に走ってしまったのか――――の、疑問も定まらないまま・・・・に、なってしまっていたようです。〕
婀:ところで―――姫君、そなた・・・・何かご用件があって、こちらに参られたのでは?
ア:あぁ―――そうでした。
実は、どうもこの界隈で、相手のモノを掠め取るという、不埒な者が横行している・・・・
そう、ここの住民の方から聞き及びまして、その対策を――――と・・・・。
婀:ナニ―――?! あっはははは――――
ナ:ぇえ〜〜??w
ア:あ・・・あら?? い、いかがなされたというのです?
婀:あぁ・・・いや、コレは失敬・・・成る程、「スリ」―――ですか。
いや・・・・しかし・・・・w
ア:あっ―――あの・・・これは、決して笑い事などでは・・・
ナ:あのぉ〜〜〜済みません・・・・ここ、どういう処かご存じないんで??
ア:え???
婀:云いませんでしたかな・・・ここは、盗賊・野盗などの類(たぐい)がうろうろしておる、文字通り「悪の巣窟」なのじゃ――――と・・・な。
つまるところ・・・スリも、立派なここの街の住人なのですよ。
ア:はァ・・・・えっ?? ―――と、いうことは・・・・??
ナ:そっ、そういうこと・・・スルやつもスルやつだけど・・・スラれた方も、そうとう間が抜けてた・・・って事。
つまり、あなたは、同じ穴のムジナ同士の化かしあいに立ち会っちゃった・・・って事なのさ。
ア:まぁっ・・・・そうだったのですか?
でも・・・あの方―――なんとも悔しいお顔をなさっていたから・・・・
婀:まぁ・・・そやつらを束ねる妾が申しても、説得力などないのですが・・・
その鳶に獲物を掠められた者・・・・随分と大きな魚を横取りされたようだのぅ。
ナ:するとなると―――・・・コレのことなんですかね?
婀:ぅん? ぉお―――・・・「ウズメのアンクレット」か・・・・。
ナ:はい―――ですが・・・こいつは、真物とは言い難いモノですよねぇ?
婀:ほほぅ―――真に・・・か?
じゃが・・・よもやお主、真物であるのを贋物のソレ・・・であると、偽りを申して―――
自分のところで、捌(さば)こうとする所存ではないのか―――?
ナ:あっれぇ〜〜? いや、バレちゃいましたか? やっぱ、頭領には敵わないや―――・・・w
婀:この不届き者めが、所望であるならもう一発、きついのを見舞ってやってもかまわぬのじゃぞ?
ナ:あぁ―――・・・いえ、ソレはもうおなか一杯なんで・・・ご勘弁くださいませ・・・w
ア:まあっ、この方達ったら―――・・・
〔そこには、なんとも不思議なやり取りが・・・「ヒジ鉄をお見舞いする」―――だの・・・と、いうことも物騒なものなのですが、
それを、両者笑いながら―――とは・・・・とどのつまりは、冗談半分に展開されていたものであることには、姫君にも判っていたことであり―――
また、その光景を御覧になられて、なんとも清々しい微笑を投げかけられていた――――と、いうようです。〕