≪四節;盗品の行方≫

 

婀:だが―――まあ、よい・・・。

  それはそちらで売り捌(さば)くがよい・・・。

 

ナ:ぇえっ? でも・・・それは―――やっぱいいですよ。

  冗談でこちらも云ったまででして・・・それに、買い取っておきながら売れ残ってるモノも随分と溜まっているんです・・・。

 

  まづは、そっちのほうから始末しておかなきゃ・・・・

 

婀:なんと・・・・そうであったか・・・。

 

  ―――では、いかがいたそう?

  ―――ぉお!そうじゃ、コレは、姫君に差し上げる事としよう。

 

ア:えっ?! わたくしに・・・ですか??

  いえ、結構でございます・・・それに、コレは何処からとってきたモノなのでしょう?

 

  そのようなモノを―――・・・わたくしは、やはり、戴くワケには参りません。

 

ナ:ふぅ―――・・・ん、いや・・・それはちょいと違いますね・・・・

 

ア:えっ??

 

ナ:まぁ―――確かに・・・コレは盗品の一つだけど、その元を質せば「トレジャー・ハンティング」・・・

  つまりは、「宝探し」を生業(なりわい)にしている者達の、いわば戦利品なんですよ・・・コレはね。

 

ア:は―――・・・はあ・・・でも、先程は同業者にスラれた――――と・・・・

ナ:う、うぅ〜〜〜ン・・・・

 

婀:まあ・・・・一つに云える事は、「トレジャー・ハンター」と、「シーフ」の、線引きじゃな。

ナ:そうですよね・・・古代の遺跡に眠る、お宝を探し出す連中は「トレジャー・ハンター」だけど・・・

  「シーフ」ってのは、形振(なりふ)りかまわず「盗み」を働く連中の事だから・・・・

 

ア:そうなのです?

 

ナ:ええ―――それに、「トレジャー・ハント」の「それ」は、学術的にも非常に高く評価されていることだし・・・ね。

婀:じゃか―――そうは云うても、シーフ紛いの事をしでかす輩も中には居る・・・と、いうのもまた事実・・・・

  まあ・・・・偏(ひと)えに、どちらが悪い―――と、いう尺で推し量れるものではないのですよ。

 

ア:そうでしたか・・・ですが、しかし・・・やはりわたくしは、それを受け取るわけには参りません。

 

婀:然様・・・ですか。(ヤレヤレ・・・・)

 

 

〔どうやら、このアクセサリーの行き先が、困難を極めたようです・・・・

それというのも、最初は鑑定士に―――そして次には姫君に―――廻っていったようなのですが・・・・

そのいづれをも、受け取らないというのです。

(その、各々の理由にしても、鑑定士は、『売れ残りの商品が、まだ随分とある・・・』だというし、また姫君にしても、『他人様のモノを・・・』というところが、非常に大きかったといえます。

まあ・・・姫君の理由は、彼女が「穢れなき者の証」でもある証拠・・・ではあるのですが・・・)

 

そしてついには、そのアクセサリー・・・最後は巡(めぐ)り廻(めぐ)って――――・・・・〕

 

 

ア:あの・・・それでしたら・・・婀陀那さんがされたらいかがです?

  わたくし如きが思いますに・・・婀陀那さんがなされた方が、お似合いだと思うのですけれど・・・

 

婀:はぁ? いや、しかし――― 妾は・・・

 

ナ:あっ!!成る程〜! それはいい提案ですね。

  いっやぁ〜〜それには気付かなかったなぁ〜〜。

 

婀:こっ―――コレッ! ナオミ殿???

 

ナ:おッやぁ〜〜ッ? もしかして、頭領・・・・

  このお姫様のように、これが盗品だから・・・っていう理由で、ご自分が取る分には気が引けちゃうんですかぁ〜〜〜?

 

婀:むっ―――! っぐぐ・・・

  わ―――分かった! これは妾が受け取ろう! それでよいのじゃろう?!

 

ア:―――――どゆことなのです?

 

ナ:いえね―――この方・・・どういうわけだか、あたし達で分捕ってくるモノには、真・鴈の区別をつける以外には、手をつけないんですよ。

  それを、況(ま)してや自分のモノに――――だ、なんて・・・・ね。

 

ア:まぁ・・・・そうだったんですの?

 

婀:これ・・・ナオミ殿・・・・全く、妾が逃げられぬように、道をふさいでしまいよるとは・・・・

  全くもって、気恥ずかしい事じゃわ・・・・

 

ナ:へへっ――― どうも〜w

 

 

〔なんと・・・ギルドの女頭領、盗品には一切手をつけず・・・とは、また珍しい事もあったようで―――

 

しかし、それは裏を返してしまえば、そういう贅沢品に窮していなかったことの、現われでもあったのです。

 

 

事実―――頭領の部屋にあるという、その調度品の数々がそれを物語っており、

特に、それらの中で目を引くのが、金字螺鈿の装飾を施した化粧台や―――樹齢数百年の古木で誂(あつら)えさせたクローゼット――――

さらには、金銀や宝石をちりばめさせたアクセサリー等は、一体どうしたものか―――・・・

 

それらの理由は、実に簡潔明白――――

この一切の物品は、総て女頭領自身の持ち物なのだから・・・それゆえに、こういう贅沢品には困ってはいなかったというのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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