<第七十章;廻り途>
≪一節;賛辞礼讃≫
〔一度(ひとたび)占拠された砦を、また再び奪還し、堂々とベルルーイに入ったセシル―――
・・・と、その一報は、既に千里を駆け巡り、今はウェオブリにて尚書令に就いている、イセリアの耳にも入っていたのです。
すると、やはりそのことを知っていたかの如く、イセリアのところに現れた人物が―――・・・〕
イ:―――これは、録尚書事様。
婀:此度は一まづお祝いを云いに参った。
そなたが見込んだ者達の働きにより、カ・ルマの侵攻を退けたようですなぁ。
イ:・・・いえ、彼女たちにとっては、このくらいのことは当たり前のこと。
そのことだけでお褒め頂くのは、いささか過小評価に値するものか・・・と。
婀:ははは―――これは手厳しいですな。
イ:ですが―――婀陀那様のほうでもそうでございましょう。
風の噂に聞きますに、あなた様の片腕でもある紫苑卿のご活躍こそ、
賞賛に値すべきもの―――と、私のほうでは思いますが・・・
婀:やれやれ―――妾ともあろう者が、一本取られたようじゃな・・・
〔彼女たちは、いわば似た者同士―――・・・
ゆえに、今回賛辞に値する者達の活躍においても、決して馴れ合うことなく、
仲間内ならではの手厳しい評価を下していたのです。〕