<第七十一章;“東征”と“南征”>
≪一節;“三傑”の動静≫
〔カ・ルマの功臣―――ヴェネフィックの兄妹、共に東にて死せり・・・の、報は、
瞬く間に黒き国中に広まり、傲岸不遜なるこの国にも、少なからずの動揺を奔らせたようです。
ところが―――この国を統率する<七魔将>・・・
その中でもさらに実力のある三人、通称【三傑】とも呼ばれている、
ビューネイ=グリード=サルガタナス
アラケス=ヅェゲラ=ベルゼビュート
フォルネウス=クシィ=ダグザ
―――は、そのことに対しても、なんら動ずる風でもなく・・・〕
ア:(アラケス=ヅェゲラ=ベルゼビュート;【三傑】の一人、“魔槍”の遣い手でもある。)
何―――? ヴェネフィックの兄弟が死んだ? 何者だ・・・そやつらは―――
ふむ・・・ふむ・・・ほほ〜う、ここ最近東方において、最も勲功のある、ヴェクサンシオンの遣い手であるか・・・
そいつは惜しい事をしたな。
官:は・・・あ、あの―――それだけで?
ア:うん?なんだ、まだ何か云わねばならんのか。
ふむ・・・そうだな―――
フフ・・・だが、そうは云えども、多寡だか人間如きの魔力で、高度な魔力を要するアレを行使すれば、
いづれ魂までも貪りかねん事よ。
まだ“人間のままで―――”と、云うのは、ある意味では幸せだったかもしれんなぁ〜〜
カァ〜―――ッカッカッカ!
〔アラケスは、形式上ではその兄妹の死を悼みはしたものの、
余りその存在自体に対しては、興味の対象とするところのものではない―――と、云ったようなところでした。
けれど、側近により件の術―――ヴェクサンシオン<嫌がらせ>の事を聞くに及び、
その術が、元は魔族専用のモノであった事を暗に仄めかし、
またそういったものを、人間のような低級な例の属性が扱うと、どういった末路をたどるのかを云い含めたのです。
その一方では―――〕
フ:(フォルネウス=クシィ=ダグザ;アラケス同様、【三傑】の一人、三叉の矛を扱う。)
ナニ―――? パロアとカデンツァの二人が?
大方ヴェクサンシオンの行使のし過ぎでそうなったのだろう・・・。
ナニ?違うのか?
・・・・えぇい!もうよい!! 煩わしい・・・私は今、それどころではないのだ。
〔フォルネウスは、アラケスが抱いていた疑問、強力無比な魔術の行使のし過ぎで命を落とした・・・
―――ものと思っていたのですが、
部下たちよりの訂正の情報を聞く途中ですぐに煩わしくなり、まるで厄介者でも払い除けるようにしてしまったのです。
―――と、このように、つまりフォルネウスも、最早この世にはおらず、あたら用を足さなくなった者に対しては、
何の関心を示さなかったようで・・・
それでは、【三傑】最後の一人であるこの人物は―――・・・〕
ビ:・・・ノー・コメント―――だ。
〔ビューネイは、そのことに関しては興味関心も抱かないばかりか、コメントを差し控えるのみに留まりました・・・。
―――とは云うものの、これはよくよくご存知の通り、今回の策略の総てを知り得ており、
指揮の一端も担っていたことから、そうする事は判るのですが、
やはりそこは、自分の盟主の策であることが露見してしまうと、まづいことがあるため、
要らぬ口を差し控えただけ―――のようなのです。〕