≪二節;録尚書事と尚書令≫
〔ですが―――それは彼女達本来の姿だったのでしょうか・・・
今、尚書令であるイセリアが、他の官僚達に指示を出している最中(さなか)、
録尚書事である婀陀那が近付き―――・・・〕
イ:・・・これは録尚書事様―――何か・・・?
婀:いや―――まづはそちらの用を済ませてからにいたそう。
イ:・・・そうですか―――
では、各省庁の責任者の方々には、先ほど私が出しておいた指示の下、
便宜を図りやすくしておくようにしておいて下さい。
解散―――
それで・・・何用でしょうか―――
婀:うむ・・・実は、妾が立案した件のことであるが―――
イ:あれは―――今の時勢では無理しすぎる事もありましょうから、
その大半を凍結させてあります。
ですが・・・婀陀那様の意向は、よろしく各州の公に伝播させておりますので―――
婀:ふむ、それならば良い―――
・・・時に、姫君―――いや、諫議大夫殿はいかがされておる。
イ:・・・アヱカ様は―――度々の諫言を陛下に疎ましがられ、
現在はシャクラディアに蟄居を命ぜられておられます。
ただ―――・・・
婀:現在の地位の剥奪もなく・・・また、馘(くびき)を断たれるでもなし―――か・・・
イ:はい―――・・・
新国王様は、ここの所―――気にそぐわぬ者を、見せしめに刑に処したばかりか、
その者の九族に亘って晒し者にしたのだとか・・・
そんな風潮の中にあったとて、なぜかあの方だけは厳罰を免れておいでである・・・。
婀:イセリア殿、ヒョウ殿はな、何も愚鈍ではない。
あの方はご自身でも解かっておられるのだ。
ご自身が・・・新しき時代に移行するための踏み台に過ぎぬ事など―――・・・
イ:・・・だからこそ、尚のことお辛いのでしょう―――
私には、放蕩三昧に游びふける様でさえ、ご自分の命脈を削っておられるようにさえ見受けられます・・・。
婀:・・・・先ほど、件の刑に処された家中の九族、それ以外の者達に慰問のお言葉と、
心ばかりの謝礼が下賜されたそうじゃ。
また、刑に処せられた家中の長は、その死をもって二階級の特進、
生前の罪は須らく払拭されたそうな―――
イ:・・・なんと、ではそれを知る者は―――?!!
〔しかし、それより後の婀陀那からの返事はありませんでした・・・。
国王自身に降りかかる、不当な評価は甘んじて受け―――
ですが・・・それこそが、彼の背負った哀しき 宿 ―――
そんな国王の姿を見るに忍びないとしたアヱカは、
もしかすると王の下命なくして蟄居に至ったのでは―――と、考えられなくもなかったのですが・・・
やはりそこは、アヱカ自身のことであり、当人に聞いてみなければ、ならなかったことなのです。〕