≪六節;軍事会議室≫
〔政策論議を滞りなく終わらせた後、次にイセリアと婀陀那は、
カ・ルマの“東征”“南征”に、どう対処していくべきか・・・の、議論を交わせるため、
作戦本部のある<大本営>に赴いたのです。
するとそこには―――・・・〕
婀:姫君の献策も、ここの所内政ばかりではなく、外交のほうも充実してきた感がありますなぁ・・・。
イ:それはそれで喜ぶべきなのでしょうが―――これから私達が頭を痛めなければならない問題は・・・
婀:ふぅむ―――最悪・・・妾たち二人も、戦場に立たねばならぬやも―――知れませんな・・・
入りますぞ―――
(あっ・・・)タケル殿―――
イ:(主であるアヱカ様の傍にいないと思ったら、既にこちらに―――)
〔大本営・作戦会議場入り口近くの末席に腰を据え下ろす偉丈夫―――・・・
しかも、そこでは既に数名の武官達が、これからの軍事の展望を話し合っている最中だったのですが―――
今回、新たに中軍師に据え置かれた漢は、その中に入るでもなく・・・
まるで岩の様に腰を据え下ろし、腕を組み―――ただ・・・静かに待っていたのでした。
そして、イセリアと婀陀那の二人が、議場内に入ってくるなり・・・〕
タ:イセリア・婀陀那両将軍様がお入りになられましたぞ、各々方ご静粛に―――
婀:―――さて・・・軍儀を始めたいと思うが・・・
妾たちが来るまでの間、何か良い策でも出ましたかな。
武:やはり・・・ここは一つ、カ・ルマの遠征に拮抗すべく、
我が方の防壁・防塁を、一層高く厚くしたほうが良いのではないか・・・と。
イ:それで防ぎ切れればよいのですが―――・・・
以前、私が籍を置いていた国の地方の砦も、防壁・防塁はこの国のよりも厚いものでしたが・・・
向こうの上級将校のなせる業には、まるでギヤマンの壁同然でございましたよ・・・。
武:む・・・ぐうぅ・・・では、どうすればよいのだ―――!
婀:・・・今回より中軍師に推されたタケル殿―――そなたから何か意見は・・・
タ:・・・先ほどまでの、イセリア殿のあの意見を聞くまでは、勝てないまでもまだ望みはありましたが―――
どうやらここは大博打が必要のようで―――出撃以外に、手はございませんかなぁ・・・
〔二人の上級将校が入室した事を告げた、新参の中軍師の声―――
しかし、彼がそれ以外に発言していたという形跡は見られず、
他の武官の、どの派閥にも組していなかったようなのです。
そして本会議に入り、意見を交わす事となるのですが・・・
汎用の将程度では、ここで出したモノが限界のようで、
イセリアの一言で言葉を失ってしまったのです。
これを見た婀陀那が、タケルに意見を聞いてみたところ―――彼からはたった一言・・・
しかし、この一言に、各将からは、国内にて戦端を拓くのか―――との声があがったのですが・・・
すると―――〕