≪二節;西部戦線 前線にて≫
〔―――ともあれ、今はキリエが駐屯するザハトムンスク砦に到着した二人は・・・〕
兵:中軍師殿と、前将軍様のお着きでございます―――
キ:―――お待ち申し上げておりました、中軍師殿と前将軍様。
婀:うむ・・・それより紫苑、そなたも来ておったか。
紫:はい。
これからの防衛をどうとるかを、州司馬殿と相談するために来た次第でございます。
婀:む―――・・・
それはそうと、そなたには新たなガク州の公を任じておるが、
そこのところはどうじゃな。
紫:はあ―――・・・前州公であるアヱカ様のお手並みは、大したものでして・・・
ここ数期に亘って、底の見えていた州政を、良くぞここまで立て直したものと・・・
それを私が受け継いだは良いものの、これをどこまで維持できるか―――
不安は尽きませんが、せめてあの方を失望させぬよう取り組んでいく所存でございます。
キ:紫苑様―――そこは気の負いすぎだと思います。
私の主も常にそうだったわけではなく、むしろ新州公様の言葉にも見られるような不安は、いつも抱いていたものです。
けれど・・・常々こうも云っておられました。
―――上に立つ者の信念が弱ければ弱いほど・・・
―――民たちは不安に駆られ、そして貧しくなっていく・・・
―――と・・・。
ここはひとつ、ご自身の信念に沿ってやられてみてはいかがでしょう。
それに、傾いていると思えば、地方の政治はやり直しが利くものです。
頑張ってください―――
〔この砦の、客を応接する間にいたのは、州司馬になったキリエと、
前任者アヱカに代わり、このほど新しくガク州公に就いた紫苑なのでした。
それに、ランペスに駐屯する紫苑が、ザハトムンスクに拠(よ)っているというのも、
アークダインから、ラージャ・ガク州に睨みを利かせているカ・ルマ軍に、
どう対処すべきか―――を、話し合いに来ていたところだったようなのです。
それと・・・この度より新ガク州公に就任した紫苑の言葉には、
前任者であるアヱカには、及ぶべくもない自分の手腕に不安を覚えていたものだったのですが、
そこをキリエは、前任者の胸中も然もあらん―――と、宥(なだ)めるにいたったのです。
それからというものは、フ国の上級将校である婀陀那と、中軍師であるタケル、ガク州司馬キリエの、
三人だけによる軍儀が執り行われたのです。〕
キ:―――なるほど、詳細はわかりました。
では、直ちにドルゼック・パルキネッセの二つに人を遣り、
パルキネッセにはギ州公の援助をよろしく取り交わせましょう。
タ:よろしくお願いいたします。
〔そこでの軍儀は、単純にして明快。
近々あるであろう“南征”の軍を防ぐべく、フ国ではない・・・隣国のラージャにて、展開しようというものだったのです。
そして、それまでの下準備―――特にギ州に近い砦からは、支援の要請の使者を立て、
このザハトムンスクに拠(よ)るように伝えておいたのです。〕