≪三節;十面埋伏の計≫
〔それよりもまづ―――フ国はガク州のザハトムンスク砦に拠(よ)っているタケルと婀陀那は、
すぐさま諸将を招聘し、これからの戦の進行を決めたのです。
それこそは、まさに用意周到に仕組まれた“兵法”なのでした・・・。〕
タ:それでは―――これより作戦の説明をしたいと思います。
まづ最初にやらなければならないことは、パルキネッセに駐屯している副将殿より、
ギ州公様に頼んで、ギ州軍を借り入れることがひとつ・・・
二つには、このほど新しくガク州公に就任された、紫苑様の擁するヴェルノア軍の全軍の出動・・・
まづは、この二つを早急になすることが先決にございます。
婀:ふぅ・・・む、紫苑の軍とギ州殿の軍―――まあ、少なく見積もっても一万五千は下りますまい。
それと、元よりのガク州軍七千五百のうち、稼動できるのは五千として・・・
実質上は三万―――か・・・
して、それだけの数を、中軍師殿はいかがなするおつもりで。
タ:・・・全三万の軍を、三千の隊にして十づつに分けまする。
キ:(三万の隊を十に分ける・・・)もしかすると、タケル殿は『十面埋伏』を―――
タ:さすがは・・・戦の場数は踏んでいらっしゃるようですな、州司馬様。
紫:なるほど・・・それを仕掛けるために、袋小路になりやすい渓谷を選んだのですか―――
〔それこそは、まさに“必中必殺の計略”であり、陣容―――
相手をおびき寄せるために、自らがわざと窮地に追い込まれたフリをして、袋小路に逃げ込む―――
のと同時に、伏せておいた十もの隊を発動・・・
しかし、これは今までに幾度となく、キリエがカ・ルマを撃退したときに用いていた手法と似てはいたのです。
ですが、違った点といえば、伏勢の数・・・
つまり―――これまでの外交が功を奏し、協力を得られるようになったということで、
今までの戦に参加していた兵の数より、多くなってきていたのです。
しかも・・・実は、今回の計略はまだこれだけに留まることはなかったのです。〕