≪四節;旧き因縁・・・≫
〔それはそれとして―――ラージャはカナンに陣取った、七魔将 ザルエラ=タナトス=スービエ は、
頃合いが良しと見て、戦端を切り拓いたのです。〕
ザ:グハハハ〜〜―――!
ひ弱な虫ケラ共ぉ!このザルエラ様が、一思いに縊(くび)り殺してくれるわぁ〜〜!!
かかれぇ〜〜―――!!
〔号令一下―――屈強・・・と、云うよりはもはや、殺戮・蹂躙を欲しいが儘にする国の兵は、
眼前にある獲物目掛けて、踊りかかろうとしていました。
そう・・・それが“釣り”で譬(たと)えるならば、格好の疑似餌―――いわゆるところの 囮 であるとも知らずに。
いや、しかし・・・その囮も、当世でも超一級の美女でもある―――〕
婀:(フフッ・・・来おったか―――)
いざ・・・お相手つかまつらん―――!!
〔それこそは、驚くなかれ、あの婀陀那なのでした。
しかし、どうして彼女が今回の囮役に抜擢されたのか―――
そのわけとは―――・・・〕
タ:婀陀那様、実は今回の“囮”、あなた様に勤めていただきたいのです。
紫:ナニッ―――? タケル殿・・・そなたそれを正気で申しているのですか?!
恐れ多くも、婀陀那様にそのような危険な目に晒す・・・
婀:よすがよい―――紫苑・・・
まあ、妾としても、此度より愛馬となったイキズキとの呼吸を知っておきたいでな。
それに・・・そなたが、たっての願いで妾に―――というのも・・・
タ:フッ・・・さすがは―――
そう・・・今回カ・ルマの<南征>に出ている“七魔将”の一人、ザルエラは―――
わが義姉の仇敵でもあり、未だにワシの心に深い傷を負わせている者にございます。
婀:なんと―――・・・そなたの義理の姉君の・・・然様にございましたか。
なるほど、つまり―――今回の大仰にも見える“必中必殺の計”にしても、
そなたの苦い思いを払拭させるに、十分に過ぎるということでありますかな。
〔タケルにしてみれば、今回の 戦 そのものはどうでもよかったものらしく、
けれども、今回の戦に参加している 七魔将 に関しては尋常ではありませんでした。
それもそのはず―――過去、自分が対峙し、苦いまでの痕(きずあと)を残してくれた者であることを知ると、
どうにかしても、その者を自分の手で始末をつけなければならないと願っていたのも、無理はなかったのです。
確かに・・・義姉の仇討ちという動機は、不純でこそあれ―――
ココロに抱えていた問題・・・自分たちの手に負えない名馬の処分・・・
これを、もしかすると適合するかもしれない者として、
目星をつけていたのが、婀陀那だったわけなのです。〕