≪五節;さも自(おの)が如くに・・・≫
〔そして―――タケルの算は見事に当てはまり、たった一騎にて、
あのカ・ルマを向こうにまわす婀陀那の姿が・・・!
それこそはまさに“戦神”―――古(いにし)えには“万人の敵”として恐れられた、
ある将校たちにも似通っていたものとされ、
あの屈強なカ・ルマ兵が、散々(ちぢ)になって乱れていたのも、また無理らしからぬところだったのです。
―――しかし・・・
それを見ていた、敵将・ザルエラは、不甲斐ない配下の兵を一蹴すると、
婀陀那に向かって、自らの武器・・・≪大斧(ターフー);デストロイヤー≫を振りかざしてきたのです。〕
ザ:ちぃ・・・逃したか―――
婀:フフ・・・そなたがタケル殿の姉君を弑謔(しいぎゃく)したるものであるか・・・
なるほどな―――中々に憎々しい面構えをしておる。
ザ:フン・・・云うじゃねぇか―――女ぁ・・・
婀:・・・本来ならば、妾のジグムンドの露払いとしたいところじゃが、
そなたの死ぬる機に場所は、今のここではない。
ザ:なんだと?ほざくな―――!!
婀:ついて参るがよい! そなたの鈍足で、妾に追い付くことが出来るのならばなぁ!!
そこで引導を渡してくれるわ―――
〔婀陀那が紡いだのは、紛れもなく“挑発”―――
しかし、これは何も空虚なものではなく、云うなれば婀陀那の本意そのものだったのです。
然りし、そのことをまったく意に介さない暴虐の将は、
自己の怒りという感情に身を委ねて、婀陀那を追い立てたのですが・・・
幾許(いくばく)か―――渓谷の半ばまで来たところで・・・〕
婀:(フフ・・・ついて来おるか、いかほどにカ・ルマの魔将と云えども、
お頭(つむ)のほうはてんで・・・と、云うところのようじゃな。
それにしても、このイキズキという馬・・・よくぞ妾の心の内を汲んでくれおる・・・。
近づきもせず―――また、離れすぎもせず・・・)