≪六節;混沌とする戦場≫

 

――するとそのとき――

 

ピュィィイ―――ッ!!

 

〔まるで、オカメヒバリのように甲高く啼いた=禽=の一声・・・

すると、それを合図とするかのように、今、必中必殺の計が発動したのです。

 

しかし、それに気づいた頃には時すで遅く、

総て周囲(まわ)りはガク州の兵で埋まり、

ここに 十面埋伏 は、完成・・・されたかのように見えたのですが―――〕

 

 

ザ:うぬぅぅ〜〜おのれ小賢しい!!

  だが―――ワシの行く手を阻む者は、死あるのみ!!

 

 

〔瘠せても涸れても、さすがは七魔将の一人、

武器の銘に『殺人者』<デストロイヤー>を冠する大斧(ターフー)を携え、

群がり来るガク州の兵を、その一薙ぎで多数手にかけたのは、まさに魔将たる由縁を知らしめたことでしょう。

 

しかも、その酷虐たる有り様を目の当たりにしたガク州兵は、これはたまらない―――と、怖気づき、

そこをすかさず支援に回ったのは、州司馬であるキリエであり、このほど新しくガク州公になった紫苑だったのです。

 

それに、キリエはカ・ルマの軍の中に、見覚えのある顔を見つけ・・・〕

 

 

キ:(あれは・・・ザルエラ配下のダンダーク―――!

  ここは、ヤツとの距離を離さなければ・・・)

  敵将ダンダーク―――! その首、この私が貰い受ける!!

 

ダ:何だと?誰だ痴れたことを抜かす―――

  あっ!お前・・・いや、あなた様は―――!!

 

――シュギィ〜ン☆――

 

キ:―――ベイガン!

 

ヒ:へへっ―――司馬殿にゃ悪いが、こいつの首はオレが貰ったぜぇ!

 

ダ:ぬぅぅ〜〜ッ・・・お、おのれぇぇ〜〜―――

 

キ:ベイガン―――そこを退いて!

  こいつは・・・こいつだけは私が始末をつけなければならないの。

ヒ:はぁ〜?聞こえねぇなぁ―――

  オレは、こいつの首を取って手柄を立てるんだ。

  それによっ―――あんたたちの昔の因縁なんて、オレには関係ねぇし、また知りたくもねえしよっ!!

 

キ:・・・ベイガン―――

 

 

〔キリエは、知っていました―――

いえ、キリエも、またそこにいた魔将の配下のダンダークも、互いを知っていて当然・・・

なぜならば、元はといえば彼らは、同じ時代に生き、また所属するところも同じだったのだから・・・

 

それが―――また再び・・・こうして相見(あいまみ)えることとなろうとは・・・

 

そう思うと、ダンダークは生きた心地がしませんでした。

唯一救いだったのは、キリエの真の姿――<蒼龍の騎士>――

で、自分の眼前に立っていなかった・・・と、いうことぐらいのものでしょうか。

 

いづれにしても、彼は自己の生命の危機を知り―――

するとそこへ、そんなキリエの邪魔をするかのように・・・いや、正確には、武を競うために横槍を入れてきた者、

虎髭将・ヒが現れたようで、どうやらこの者は、キリエの事情をよく知っていただけに、

いよいよもって、ダンダークの生き残る率が低くなっていったのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

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