≪七節;追い込んでいたのは―――・・・≫
〔一方―――婀陀那を追ったザルエラは、全身朱に塗(まみ)れたかのように、ガク州兵たちの返り血を浴び、
終(つい)には婀陀那を追い詰め―――
いや・・・追い詰めていたのは、果たしてどちらのほうだったのでしょうか・・・・〕
ザ:フフフ―――とうとう追い詰めたぞ・・・このワシを罵(ののし)った事を心底呪うがいい!!
このデストロイヤーで、その駄馬ごと断ち割ってくれたあと、その屍体を姦してくれようぞ!!
――あっははは――
ザ:ナニがおかしいか―――!!
婀:いやはや・・・なるほど、下衆の下衆たる由縁―――妾の屍体を嬲り者にしようとは・・・
まさに鬼畜外道にも劣る思考よな。
それではそなたのお頭(つむ)も、多寡が知れる―――と、いうものよ。
ザ:なんだと・・・? キサマ―――殺してからではなく、生きたまま・・・
婀:それよりも―――そなたに会いとうてならぬ御仁がおるのじゃが・・・
ザ:むん―――? なんだ・・・それは・・・
婀:さて・・・直接に渉り合ってみるがよい。
〔ザルエラは―――魔将は、己を罵った女を追い詰めました。
―――が、どうして彼の思考の中には、まんまとおびき寄せられたとするものは、ほんの一寸(ちょっと)もなかったのです。
そう・・・すでにそこにいる―――臨戦態勢に入り、彼を待ち構えていた者がいることなど、
露ほども知っていたわけではなく・・・〕
――〜 ピュィイ――――ッ! 〜――
〔すると、そのときまた―――甲高い=禽=の啼き声が、戦場に木霊(こだま)し・・・
そこはまさに、ザルエラにとっての 死地 となってしまったのです。〕