≪二節;アヱカの知る名医≫
〔そして、アヱカとホウがいる部屋に来たとき―――〕
リ:アヱカ殿―――!
ア:ホウ様・・・どうやらご母堂(ぼどう)様が、わたくしに相談があるようです。
つきましては―――判ってございますね・・・
ホ:うん・・・判った―――
リ:アヱカ殿、今、ホウに何か・・・
ア:そのことを、ここで述べるのは都合がつきませんでしょう。
ここは一つ―――場所を変えて・・・
〔そのときは、アヱカはやはり何かをホウに教えている最中のようでした。
でも、いつ何時、この国の官の誰かが自分を頼ってくるだろう―――と、
さも判っていたかの如く、だったのです。
ですが―――本当は・・・ここに誰が来ても、アヱカはそうしたことなのでしょう。
それがたまたま、今回は大后であるリジュだっただけの話し・・・
では、アヱカはそこでナニを説いてあげたのでしょうか―――〕
ア:ヒョウ様の容態―――ここに来て思わしくないようですね・・・。
それも、典医長様が匙を投げ出すほどの・・・
リ:はい―――・・・そのことは、この国の官である方々も同じ・・・
もう、私たちは、国の王の死を待つだけでしかないのでしょうか??
ア:・・・彼らは―――国政を鑑み、それを司(つかさど)ってくれる者達です。
それがどうして、一個人の身体のことを論じることが出来ましょうか・・・。
それに、“餅は餅屋”―――と、云う諺があるように、人には適所というものがあります。
リ:し、しかし―――その御典医殿が・・・もうヒョウ殿は助からないと―――!!
ア:落ち着いてください・・・大后様。
私が、ここしばらく天文を観ておりまするに、未だヒョウ殿の命脈は絶たれたわけではございません。
リ:・・・え?“天文”を―――?
あなた様は天文をも―――
ア:この国に限らず、大陸総ての官たちには、それは必須科目だったように思われますが・・・
それはまあいいでしょう―――
それに、これから私の言(げん)に耳を傾けてくれるならば、唯一の手立てを講じましょう。
リ:唯一の・・・救う手立てを―――あなた様は知っていると申し上げるのか?!
ア:救える―――か、救えないか・・・は、私でもわかりません。
ただ、その者達が、今のヒョウ様を診てどういう判断を下すか・・・
私も、そこのところは大いに興味はあるのでね・・・。
―――いかがなされます、私に一存を・・・願えますか。
〔アヱカは、やはり何かに心当たりがあるらしく、
しかも誰が訪ねてきてもいいように、用意された回答をするのでした。
それこそが―――自分に総てを任せてもらえるなら、
今、死の淵にいる国王を、再び立ち上がらせてご覧にいれよう・・・
ただし、救えるか救えないか―――は、これから自分が呼ぶ“ある者達”の見立て如何によるものだとし、
それから大后より、“まかせる”との一任を受けた者は、自らの居住であるところへと戻り、
とある場所に向かって、何かの打診を行ったのでした。〕