≪六節;種の差異≫

 

へ:ふぅむ〜―――これは思ったより深刻ですね。

  どうしてこうなるまでに、処置をせずに放っておかれたのですか。

ア:それは・・・仕方がなかったんだ―――

  この方がご典医の云いつけを守ってさえいれば・・・

 

へ:それでは―――そのご典医殿に落ち度があったと見るべきですね。

  私だったならば、診療台に縛り付けてでも安静にさせておくものですが・・・

ア:そのことを今更云っても始まらない。

  どうにかして回復させる手立てを―――・・・

 

へ:・・・レントゲンで見たところ、胃の部位に腫瘍らしき影が確認されます・・・。

  開けてみて、グリオーマでなければよいのだが・・・

 

リ:―――グリオーマ??

 

へ:ええ、悪性の腫瘍のことです。

  安直に物事を判断してしまうのは至極簡単なことですが・・・

  この大きさからしてみると、その確立は大いにしてある―――と・・・

 

  それで―――そちらの方はご家族の方なのですか。

 

ア:こちらの方は・・・患者である国王様の義理の母上に当たられます。

 

へ:なるほど―――それではお義母さん、

  私たちはこれから患者様のおなかを開けてみて、病巣を取り除きたいと思っているのですが・・・よろしいですね。

 

リ:お・・・おなかを―――開けるとは、腹を割くと申し上げるのか?

 

へ:・・・ええ、まあ確かに、そうは違いはないのですが、

  まづそうしないことには、患者様の苦しみの因となっている病巣を取り除けられないのです。

 

リ:し・・・しかし―――そうは申しておっても、そなたたちは 人外の者 ・・・

  治すと云いおきながら、国王陛下の命をとろうという目論見なのではないのか?

 

へ:これは―――・・・

  非常に残念ですが、意思の疎通が図られていなかったようですね。

  ご家族の方のご同意がなければ、いくら私だとて無理に出来ませんから・・・

 

 

〔そこにあった医師と助手の遣り様は、時代的に鑑みても非常に奇抜で、

患部である腹部切開を試みて、直接病巣と認められるところの胃という臓腑を取り除く―――という、

オペラティオン=手術という処置を主にしていたのです。

 

けれども、今までにも見せてもらったことから、この二つの存在は人間ではない者―――人外の者・・・

それが人間の皮をかぶり、王を害するために近づいてきた・・・

そうリジュは思ってしまったのです。

 

ですが、それを云われたヘライトスは、そのことに反応して憤慨するでもなく、

それでも“残念極まりない”とした上で、この場から立ち去ろうとしたのです。

 

すると・・・今回この者達を招聘したアヱカは、このままではいけないと思い―――〕

 

 

ア:ああっ―――ちょっと待って・・・

  リジュ―――なんてことを申し上げたのです!!

  確かにこの者達は人外の者だけれども、それでは私たちに何か害を与えるようなことをしたのだろうか?!!

  そうではないだろう―――逆に私たちのためになることをしてくれるというのに・・・

 

  それは、確かにあなたの云い分も判らないでもない―――

  けれど・・・もう、この者達の手を借りなければ、ヒョウ様の命を救う手立てが見つからないのです!!

 

 

〔アヱカも・・・本当のところはどちらかを迷っていました。

しかし――― 一つの生命の危篤に、種の差異などという細かいところに捉われることを善しとしなかった者は、

人外の者でも 名医 と呼ばれる者達を招聘しようとしたのです。

 

それこそは・・・まさに背に腹は変えられぬ、最後の手段でもありました・・・。

 

それを、真摯に、真顔で説得をしてくれたアヱカの気迫に押されたのか、

リジュも理解を示し、革(あらた)めて手術の許可が下りたのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

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