≪二節;禍いの因≫
〔それから見舞い客と入れ違いで太后リジュが入室し、
計四名となったその部屋で―――・・・〕
ア:・・・ヘライトス、先ほどの発言、私は感心しなかったぞ。
へ:―――申し訳ございません。
しかしああでもしないと、見舞い客の目がこちらに向きませんでしたので。
ア:だが・・・では、私にどうしろと―――!
ヒ:アヱカさん・・・もう止めてください。
思えば、私のほうも責任のない発言をしてしまって、後でどう取り繕うか・・・
そうしようとしたところで、先生のあの一言―――半分焦りもしましたが、
おかげで気が楽になりました・・・。
へ:・・・いえ、私のほうこそ思慮のなさがあったようです。
さて、いつものように注射を打っておきましょうか―――
〔アヱカは、たとえ冗談交じりであったとしても、その場でのヘライトスの発言が適切ではなかったと叱責しました。
けれども、同じ部屋にいながらにして、無関心を装っている者に、見舞い客のほうが怪しんでいた感じもあり、
そんな者達の関心を、また別のところに寄せさせる・・・そんな工作もあったのです。
そのことを、王であるヒョウは、どちらの側にも言い分があり、
ヘライトスにそんな発言をさせてしまった、自分にこそ非はあるものだとまでしたのです。
そう・・・これを見ても判るように、ヒョウには人を思いやれる心が備わっていた―――
ただ、惜しむらくは、身体の弱かったこと・・・
もし、常人並みの健康体であったならば、父王であるショウをも凌ぐ善政を行えたのだろうに・・・
けれども、それこそが、彼の一世一代による、国民たちに仕掛けた 罠 であり、 大芝居 であったことを、
誰一人として知る者はいなかったことでしょう。〕