≪四節;兄と義弟≫
〔それはそれとして―――実母であるリジュに、病床についている義兄の下へ見舞いにいくように・・・
と、促されたホウ王子は―――・・・〕
ホ:兄様―――・・・
ヒ:・・・ホウか、大きくなったな―――
ホ:ううん・・・ボク、ちっとも大きくなっていない―――ちっとも大きくなんかなっていないよ。
ヒ:・・・いいや―――私が云っているのはな、“人間的”に大きくなっている・・・と、云ったのだ。
ホ:―――兄様? どうしたの?? 急に・・・そんなこと云ったりするなんて―――
ヒ:・・・いいか―――ホウ、よくこれから私が話すことを聞くんだ・・・
〔その・・・兄弟は―――例え義理だとは云えども、実の兄弟よりも親密でした。
幼い者は、病弱の兄を労わり・・・
兄は、今年12歳になったばかりの、歳の離れた弟を、
これから自分が作り上げてしまった、悪い評価のある国王の地位を譲渡することを、申し訳なく思っていました・・・
しかし―――義兄はそこで、義弟に話して聞かせたのです。
この世はすでに“大義”の名の下に集い始めていることを―――
この世は、すでに自分たちの手には負えなくなっている―――と・・・
それは、=列強=の各当主ですら時勢を見誤っていたことであり、
自分たちの国は、前国王や官たちが優れていたからそうはならなかった・・・
ただ―――自分や義弟に、果たして前国王並みかそれ以上の治世の手腕があるかと問われれば、
間違いなく自分は“違う”と云うだろう―――
けれど、現在は世襲制が主観としてあり、“王”の子は“王”に、“大臣”の子は“大臣”に・・・
と、云ったようなことが当然のように行われていました。
でも、その者達が、果たして“優秀な”王や官吏のままではなく、
むしろ自分のように劣悪なる存在だったなら・・・?
そのことを―――もし、義弟が 国王 という名を重荷に感じてしまったら、
そのときはどのように行動するべきか―――を、ヒョウは真摯に云い聞かせたのでした。〕