≪六節;泪潤の密会≫
〔その、提案とは―――・・・〕
タ:・・・公主様、少し―――よろしいでしょうか・・・
婀:あ・・・ああ―――すまぬ・・・
タ:これからお話しすることを、この国の録尚書事であるあなた様にするのは、憚(はばか)りが過ぎることなのですが・・・
―――この国は、もうそんなに長くは持たないでしょう・・・。
婀:――――・・・。
タ:そのことは、現在国政を動かしているあなた様はもとより、その補佐をされているイセリア殿とて感じていることでしょう。
ただ・・・そのことを口にしないのは、あなた方二人が、この国の中心的役割を担い、舵取り役でもあるからだ・・・。
そのことに安心を覚えた国王様が―――・・・
婀:―――違う! ヒョウ殿は、そのような浅慮なことをなされる御仁ではない!!
タ:―――まあ、聞いてください・・・。
そのことは、ここにいる者は、すでに承知の上ですから・・・。
あんな・・・生来から身体の弱かった方が、宴の度ごとに口にされていたものを、一気に嘔吐するほど無理をなされるなど・・・
アレではご自分の身体を苛(いじ)めているようなものだ―――・・・
ですが、そんな彼でも、ある安心感から必要悪に徹することが出来たのです。
この国を―――いえ・・・この大陸の未来を、ある方に託するために・・・
婀:――――!!
タ:このことに聡(さと)い者は、すでに動きつつあります―――
ここだけのお話しですが・・・太后・リジュ様を擁立する動きも―――
婀:―――なんと?!リジュに・・・
タ:・・・ですが、あの方はお受けにはならないでしょう。
問題はそのほかの方です。
中には、前司徒であられたイク様にも近づいた者もいたようですが・・・
〔けれども、その噴飯に過ぎることは即座に断られ、彼の者の思惑によって高札に掲げられ、
辱めを受けることとなった・・・と、タケルは続け、
ここにいよいよフ国の命脈も、終焉に近づいてきたことを語ったのです。
しかし、タケルの最も危惧しているところは、もっと別のところにあり―――・・・〕
タ:これは、あなた様も知る由などなかったことなのですが―――
・・・ヴェルノアの公主宛に、あることを唆(そそのか)せるような文章を受け取った―――と・・・
婀:なん・・・じゃと―――!?
妾はここにおるのに、その妾に簒奪を打診するような間抜けがおると申すのか!!
タ:・・・と、本来ならば、単なる嗤い話で済むことなのですが―――
婀:・・・そう、ではない―――と?
〔そのとき、タケルが得ていた情報は、こんな間抜けな策の裏の背景には、“黒幕”があるものだとし、
ヴェルノアの公主本人がこの国にいるのにも係わらず、フ国転覆を目論んだ者の心の隙間に付け込んだ、
カ・ルマの所業をそこで知るにいたったのです。
しかも・・・まだその詳細を知るのには、フ国の官吏ばかりではなく、
ヴェルノアのほうも、数人の高官が調略を受けていた形跡があることが、浮き彫りとなってきたのです。〕